尼崎文学だらけ
ブース 純文学A
白昼社
タイトル さよなら楓ちゃん
著者 泉由良
価格 400円
カテゴリ 純文学
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紹介文
短篇「さよなら楓ちゃん」

幼稚園から中学まで同級生で、
その後ばらばらの高校と同じ予備校を経て大学生になった、ふたりの女の子。
今になっては重いだけでしかない──ような気がしてしまう──ビタースウィートな記憶。
あの頃私たちのあいだにはうさぎのぬいぐるみ、かえでちゃんがいた。

大好きだった私のこぶたと、あの子のうさぎの物語。


(同時収録)
詩 桃の夢
2011年詩作合評会in Necotoco 共通テーマ「桃の夢」提出作品


 薄い桃色のぶたの縫いぐるみを持っている。名前は、バムセという。

 初めてバムセと出逢ったのは、ある児童書のなかで、私は小さい子どもであったときにそれを読んだ。原作はスウェーデンの『ロッタちゃんのひっこし』というその本が私はとても好きで、バムセとは主人公の女の子「ロッタちゃん」が大切にしているぶたの縫いぐるみの名前だった。「ロッタちゃん」のシリーズがスウェーデンで映画化されたとき、バムセは本の挿し絵から飛び出してきたかのように縫いぐるみになって、日本でも販売された。特大サイズから小サイズまであって、私は中くらいのサイズのバムセを、今でも大切に持っている。時々かおが向いている方を変えて違うものを見せてやったり、あたまを撫でてやったり、しっぽをちょろりと触れたりする。大切な、世界でたったひとつだけ。たったひとつの、私のバムセ。大切な子。

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「しずるちゃんデイトしよお」

 Kちゃんの言葉はやわらくたゆたう、関西弁だった。</p>
 懐かしく思い起こす反面、眼球の裏に鈍い痛みが走る。</p>

 しずるちゃんデイトしよお。


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