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ほぼ最後の頃に彼女を含む女子3人が見舞いに現れた。だが骨折とはいえ入院 |
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万難を排し、想いを貫くための検討と奮闘。運命をねじ伏せ、愛を勝ち取る物語。 前提として、愛がある。形や濃淡は違えど、ここには確かな愛がある。恋愛感情だけではなくて、友情や思慕、信頼までも含めての愛。登場人物の、であるとともに、作者のまるたさんの眼差し、筆致にもそれは現れている。 主人公、圭は魔女の涼乃に恋をする。だが、魔女を縛るルールは残酷だ。どうしてこの世に魔女を存在させるのかというほどに。圭は言う、「僕は君を諦めない」。この一言に込められた、狂おしいほどの愛情と覚悟。ただびとである自身と、魔女である涼乃、互いを尊重し共に在るために何をすべきか、有言実行の人である圭の一途さと、涼乃のしなやかさが小気味よく、友達を応援しているように物語に没頭してしまう。 また、二人の友人たちや「運命」であるところの彼もまた、確立された人物像でもって物語に厚みを持たせ、彩る。 物語との心理的な近さは、こなれた地の文と会話文、違和感のないスムーズな運びによる。実際的で現実的、それゆえの説得力。恋愛ジャンルだからと一歩退いてしまう方にこそお勧めしたい。 ――というのが文フリガイド9号に寄せた推薦文。がちがちに固いですが、つまるところ、すずのん可愛い! 圭ちゃんがんばれ! ディテール描写大好き! 結婚式呼んで! ということです。 序盤のえちぃ展開すら可愛く思える、まるたさんワールドにぜひ! | ||||||||||
推薦者 | 凪野基 | |||||||||
推薦ポイント | とにかく好き |
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魔女である少女・涼乃と彼女に恋をした委員長・圭。高校生の甘酸っぱい恋愛物語が始まるのかと思いきや、ひたむきな愛を以て静かに壮絶に運命と戦う人々の物語でありました。 とにかく魔女という存在に課せられた宿命があまりにも過酷で、それでいて涼乃自身は健気で心優しい普通の少女なので、読んでいて可哀想でたまりません。好きな人の子どもを産むこともできない。好きな人に好きになってもらうことも許されない。あまりにも幼くして、望まぬかたちで処女を喪わなくてはいけない……。 魔女として生きるために固く封印されていた涼乃の本当の心が、とにかく前向きで一途な圭によって解放されていく、その変化の過程が非常に可愛らしく、儀式の場面の二人の交合は一種の神聖ささえ感じさせるほどです。 周りで見守る友人たちもキャラが立っていて、彼女たちに感情移入して二人の人生を応援したくなってしまうこと請け合いです。 最終話「僕らの幸福論」がわけても素晴らしく、個人的には圭と、涼乃の「運命」大橋との間に芽生えていく不思議な絆にとても魅力を感じました。 どうしようもなく襲い来る未来のことを考えて、ともすれば悲しくなりそうな読後感も、圭のポジティブシンキングのお陰で「きっとなんとかなるんだ」と信じることができる。そうでなくても、二人が幸福に生きた時間は確かに存在したことを読者はわかっている。 本を閉じるとき、「これで良かったんだ」という何とも言えない充足感が心に残ります。 | ||||||||||
推薦者 | 並木陽 | |||||||||
推薦ポイント | 物語・構成が好き |