尼崎文学だらけ
ブース ライトノベル1
猫舌連盟
タイトル VIVID それはまるで恋の様に私を犯し蝕んだ
著者 時邑亜希
価格 600円
カテゴリ JUNE
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紹介文
常に正しくあろうとするあまり孤立する不器用な女子高生、夏木一依。
ギリギリの精神状態で生きる彼女の前に表れた退廃的な魅力を持つカウンセラ、柚原あざみ。

街で広がる謎の変死事件、自殺した生徒に対する負い目、夜の街で妖しく笑う女、

それぞれの思惑が交差するとき、やがて事件は一つの結末に辿り着く・・・

これは、そんな彼女たちの出会いと、心を繋ぐまでのお話を描いた甘くほろ苦い

“偏愛伝綺小説”です。

http://nekozitarenmei.wix.com/nekozita-web#!vivid/hedqj

「まぁ、そうやってたくさんのことを知るうちに純粋さを失って、その分人の世に馴染んでいくというのは生きていく為には仕方の無い選択よ。これまでの夏木さんがちょっと純粋過ぎたのかも知れないわね。人間長く生きればそれだけ関わる社会も広がるわ。でも、その社会全部に干渉して生きていくことは出来ない。酷い言い方だけど、隣にいない人のことであれこれ悩むのは私としてはお勧めできないわね。ほら言うじゃない? 汝隣人を愛せよって。精々隣にいる人、隣に居たいと思える人を愛するくらいが人の限界よ」
「汝隣人って、そういう意味の言葉じゃなかったと思いますけど……」
 一応、この高校の敷地の裏山には教会がある。ミッションスクールという程ではないにせよ、神父さんが時折特別授業で講師を務めることもある手前、隣人愛についても話を聞いたことがある。確か、マタイによる福音書22章39節によれば『隣人を自分のように愛しなさい』だったはずだ。綺麗事の理想論だが、私は嫌いじゃない。その通り実現するのは困難かもしれないが、言葉通りにとらえればとても正しい、素敵な教えだ。
「うーんネガティブから考えるのは夏木さんには向かないわよね。ならまずは困っている人の隣人になりましょう。そこから見えてくるモノはきっとあるはずよ。私は、夏木さんの隣人たり得てるかしら?」
「……隣人だと思いますよ」
「そっか、よかった」
 やがて床を掃き終わり、塵取りでゴミを集め、お掃除終了である。後半、柚原女史が手伝ってくれたおかげで思ったより早く終わった。隣人愛に助けられた形である。
『四時前になりました。再度お知らせします。本日より、放課後の部活動、委員会活動は―――』
 再度流れる早く帰れ放送。ハイハイ、言われなくても早く帰りますよ。
「誰かと帰りなさい、ですって」
「別に、強制じゃないですから」
「今日アルバイトは?」
「休みです」
「そう。じゃあ、一緒に帰りましょう」
「え?」
 視界には箒片手にドヤ顔でこちらを見ている隈女。一瞬何を言っているのかよく分からず、ポカンとしてしまう。
「だって、私もこのままだと一人で帰ることになるわけだし、危ないじゃない?」
 まぁ、確かにそうなるか。


百合と伝奇の味付が絶妙な一作
不器用な女の子が、人生の先輩のお姉さんに導かれ、ゆっくり
成長していく物語です。
トゲトゲしていた一依ちゃんがゆるっとした雰囲気をもつあざみさんに
じっくりほだされていく様子がとにかく可愛い。
はっきりした女性同士の恋愛というよりも、出会いから信頼関係がしっかり
積み重ねられ、友人以上へと一歩踏み込む。そんな初々しさと温かさの
ある百合です。
そして、そんな二人が街で、学校で事件に巻き込まれていき……伝奇と冠する
にふさわしい終盤の怒涛の展開は息もつかせません。
文も読みやすく、百合好きでない人にもおすすめしたい、芯の通った
面白さのある作品です。
推薦者第一回試し読み会感想
推薦ポイント人物・キャラが好き