尼崎文学だらけ
ブース ライトノベル1
猫舌連盟
タイトル 金色の少女は廃墟に眠る
著者 時邑亜希
価格 900円
カテゴリ ライトノベル
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紹介文
廃墟マニアという人種を知っているだろうか?
読んで字のごとし、朽ち果て忘れ去られた廃墟に立ち入り、そこに残された記憶の残滓に思いを馳せて悦に至る。そんなロマンチストたちのことだ。

廃墟探索を生き甲斐とする浅海ローラが出会ったのは、朽ち逝く洋館の二階、曇りガラスから差し込む木漏れ日に積もり溜まった塵芥が乱反射する中眠る金髪ツインテールの少女で……

怒濤の異能アクション×百合要素若干多めでお送りする新伝綺譚!

“人食い”女子高生と、金髪ロリツインテールが織りなす『幸せを求める物語』、開演です。

http://nekozitarenmei.wix.com/nekozita-web#!blank/e1wt8

 鍵を開け、チェーンロックを外し、ハンコを持って迎え入れる。渡される荷物は案外軽い。両手が塞がる。手が伸びてくる。え? 口を押さえられる。お腹にピリリと走る感触。熱が、あれ? 何? 熱い? え? あ? あ? あ――――――

 そして劈く悲鳴は男の手に阻まれ響き渡らず、鉄の扉とコンクリートの壁に阻まれた団地の室内は惨劇の様子を戸外に伝えること無く、人知れず狂気は実行されていく。
 繰り返される惨劇のリフレイン。終わりの決まった演目。絶えず上塗りされる恐怖は憎悪を蓄え、やがて怨嗟へと変化する。ここはその製造工場。常人には見えない境界の狭間。こちら側と、あちら側の間にある不確かな世界で人知れず行われる行為。
 いつかここを訪れたカップルはその漏れ出す怨嗟に気が付かず、後日交通事故によって死亡する。度胸試しに訪れた大学生たちは、その帰り文字通り狂ったように度胸を試して飛び降り死んでいく。取材に訪れたライターは、その後謂われの無い悪意に苛まれ職を追われ、山中に消えて死んでいく。
 そんな地獄がこの猪見谷工業団地13号棟505号室。

 ―――が、今回ばかりはその惨劇に特別ゲストが登場。口をふさがれ、両の手は段ボールを持ち、為す術も無くお腹に突き刺さるはずのナイフは、ゲストの持つ肉厚のフォールディングナイフに阻まれた。



「――っ! 何見えない境界の狭間ん中でこそこそやってんだよこの変態が!!」
 入って直ぐ、目の前の光景に驚く暇も無くナイフで殺人鬼のナイフを受け止め、打ち払うように一線。上に弾くと、狭い玄関でコンパクトに膝蹴り、上段、蹴り下ろしの三連撃。後ろによろめき扉に背を預ける殺人鬼。呆然と立つ団地妻の手を取り、奥の居間へ引っ張り込む。