出店者名 春夏冬
タイトル 春夏冬プチアンソロジー 食べ物
著者 雪瀬ひうろ(ゲスト)、如月佑(表紙)、明巣、姫神雛稀
価格 400円
ジャンル 大衆小説
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紹介文
「食べ物」をテーマにしたアンソロジー。
春夏冬所属の如月佑が表紙・裏表紙を担当。同じく春夏冬の明巣、姫神雛稀が小説を書き、ゲストとして現在主にカクヨムで活動されている雪瀬ひうろ氏をお迎えしました。
甘め表紙を裏切るスパイシーな内容をどうぞお楽しみください。

囚われの君へ(姫神雛稀)より抜粋
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「朝飯できたぜ、お姫様」
「……おはよう、ロク」
「おはよ。今日も元気そうでなによりだ」
「できれば予告をしてからドアを開けてほしいんだけど」
 小さな要求を言えば、彼は苦笑いをして呆れたように息を吐く。
「お前、捕虜だって分かってる? どうせ二十四時間見張ってるんだから今更だろ」
 指差す先には確かにカメラ。隠す気は欠片もないようで、もろにカメラの形の物がレンズをむき出しにしている。三台使って部屋全体どこにも死角がないように見張っているらしい。
 私も最初のうちは気になって仕方なかったけど、もうどうとも思わなくなった。
 あの狭くて空気の悪い部屋に入れられていた頃のことを思えば雲泥の差だし。
 でも、それとこれとは別の話で。
「直接見られるのとはわけが違うでしょう」
「はいはい気を付けますよ、お姫様。ほら手ぇ出せ」
 こうやって、部屋から出る度に枷を付けられるのだから、自由の身でないことは嫌というくらい分かっている。
冷たい手錠の次は目隠しまでされ、ロクの誘導に従って廊下へ。途中、右折左折を一回ずつして向かうのは既に朝食の整ったダイニング。
 視界を取り戻し、手も解放してもらってから椅子に腰かける。
 目の前には黒いテーブル。その上にガラスや陶器の食器がいくつも並んでいて、背後からロクの説明が流れる。
「手前右より、根菜の煮つけ、飛魚の炙り、菜の花の生姜和え、湯葉と紫蘇の包み揚げ。後ろ右より、五割麦飯、南瓜の味噌汁、和梨の葛寄せ。残さず召しあがれ」
 そしてその横に、毎食後飲むよう言われている薬。捕虜になる前から飲んでいたもの。
「……いただきます」

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