出店者名 白昼社委託
タイトル ヌマージュ
著者 山本清風
価格 500円
ジャンル 純文学
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紹介文
ベッドがあり、橋梁があり、水差しが設えられていて、
川の流れには廃棄された大量のタイ料理が──。
私とおまえとの尽きせぬ対話。此処は何処なのか、
おまえとは誰なのか何故生きているのか死んでいるのかそもそも、私とは一体。

荒唐無稽な世界にあって尚思考をやめられぬかなしき人間の、
これは便所の落書きのようでありながられっきとした、神様のエロ本。


 性器を擦るのみに於いて他人に迷惑を掛ける必要がない。
 性器を擦ることに他者を介す必要はない。
「だからおまえは孤独なんだ」
「またおまえか。性器を擦りながらひとに語りかけるなよ」
「だからおまえは処女なんだ」
「処女と孤独が等価値とはなかなか情趣があるじゃないか。おまえは性器を擦って友達百人できたのか」
「俺が訊いてるんだ」
「性器を擦るのをひとに報せる必要はない。私には性器を擦り合わせる必要がない。何やらおまえは性器を擦り合わせる了解にばかり気をとられているようみえるが」
「これはな、メタファーなんだ。これはな、コミュニケーションなんだよ。これが人間なんだ」
「処女と孤独と人非人が等価値とはおまえなかなか風情があるじゃないか。性器擦る故におまえ在り、というわけだな」
「性器を擦り合わせることによっておまえは誕生したんだ」
「私を私たらしめているのは性器の擦り合わせ。とでも言いたいのか?」
「ひとは土から離れては生きていけんのだぞ」
「ひとはいずれ土に還ってゆくかも知れんが、土から芽を出したわけではあるまい。??それでも生きている?℃рヘそう言ったはずだ」
「いきそうだ」
「私はそんなこと訊いてないぞ」
「いく、ということは生きてゆく、ということだ」
「睡眠同様くり返されるちいさな死、逆説的におまえは生きているというわけか」
「もう限界だ」
「我慢するくらいなら死ねばいいだろ。死ね」
「臨界…」
「逝くと生くが同音異義というのは有休が悠久ではないくらい皮肉だよな」
「対義というのは両極の端と端とで円環を結ぶものなんだよ。貴様が敬意から敵意へと、手前やわれが自分から相手を指す言葉へと変容したように」
「医者が患者となったようにな。片づけておけよ、そこ」
「臨界っちゃった…」
 床を擦るのみに於いて他人に迷惑を掛ける必要がない。
 床を擦ることに他者を介す必要はない。



 てめえでやれ。