アイオ村は、平和で体育な村だった。その日、彼女がやってくるまでは。 僕の運命を変えてしまった人、彼女の名はランディ。 いつも希望に輝いていた人……そして、ちょっぴり口の悪い人。 「ランディ」、そう口にするだけで僕の胸は希望で溢れてくる。
(セシルの日記より)
第一章 旅立ち
穏やかで、平和に包まれたアイオ村。大陸の最南に位置し、観光できる所でもないので旅人が訪れる事はほぼないと言っていいだろう。若者にとったら退屈でしかたがない村だが、それでもセシルは自分の住むこの村が大好きだった。
買い物に出かけた父を待ちながら、部屋で勉強をしている少年がいる。透けるような美しい金に光が当たるとほんのりピンクに見える肩まで伸ばした珍しい髪、長いまつ毛にの下に利発そうな光を放つエメラレルグリーンの瞳。少年と呼ぶには華奢な体。この美しい容姿が、彼の悩みでもあった。彼の名はセシル。神官を目指し、教師である父カートとここアイオ村で二人で暮らしている。 母ケイトは4年前に病気で亡くなっており、時折寂しそうな顔を見せるが、彼は誰からも愛されていた。 十四歳と十ヶ月。平和に満ちたアイオ村でセシルは幸せに暮らしていた。
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