花の章 起
森の中に、 一軒の大きなお屋敷がありました。 そこには可愛らしい少女が住んでいました。 病弱で一人ぼっちの少女は、 いつもいつも泣いてばかり。 やがては少女の涙が雨となって、 毎日森に降りしきるようになりました。 森の生き物たちは、 毎日雨が降るので困ってしまいました。 これじゃあお花の蜜を吸いに行けないや。 せっかく実った木の実が落ちてしまうよ。 森の中は霧が立ち込め、 生き物たちは雨に濡れぬよう、木々に寄り添い青色吐息。 みなからだにつゆをまとわせてぶるぶると震えていました。 森のだれもが泣き虫の少女を疎んじました。 少女は自分を憐れんでいっそう涙に暮れました。
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