出店者名 浮草堂
タイトル 僕が壊れていく世界で死んだ彼女は幸福に暮らす
著者 浮草堂美奈
価格 0円
ジャンル JUNE
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紹介文
電子書籍コード無料配布。某ひぐらしな作品で、無数の物語のルートがあったことを覚えていらっしゃるでしょうか。
空六六六とヘヴンズ・ドアーのクロスオーバーは、そういう別ルートの物語になりました。
七竃納がメフェイスト・フェレスに出会わず、飯塚依子の生まれた時代が現代だったルート。
16歳で悪魔に出会わなかった彼が、高校を卒業、就職。
そして父を殺し、売春を生活手段とし、殺人鬼という名前のある怪物になる。
自分を買った男たちをなぜ殺してしまうのかわからないナイトウォーカーを、足が動かず盲目の飯塚依子が『殺す』まで。
男性同士の性行為表現はありますが、直接描写はありません。こちらのルートはJUNEジャンルでした。(8/7変更)

 同じ日の夜、外国人の男に聞かれた。
【歌わないの?】
【歌を知らない】
【なんにも?】
【なんにも】
【じゃあ、こういうことは誰に教わったの?】
 頭の中で英単語を探す。
「プリースト」
「ゼン?」
 頷く。
【英語はどこで?】
【中学校と高校】
【なんだ、高校生か】
【高校も卒業してるよ】
 ちょっと考えて。
「アイアムフッカー」
 スラットとかなんとかぶつぶつ言ってる。
【小さい子しか好きじゃない?】
【まあ、そうだよ。騙された】
【ごめんね。値引きしないよ】
【今回でバックパッカー卒業するのに】
【お金なくなったの?】
【就職するんだよ】
【おめでとうございます。お仕事聞いてもいい?】
【学校の先生】
【やっぱり】
【非難しないの?】
【学校の先生はみんなひどい人だもの】
【そうだよ。僕の初体験も先生だ】
【就職祝いちょうだい】
【君がくれるものだろ】
【喜びは分かち合うもの】
【分かち合ったことが?】
【奪ってばかりいる。ちょうだい。歌ってよ】
「イッツアスモールワールド」
「ノー、ワールド イズ ビック」
【君の世界はこの歌も知らないカラオケボックスの一室だけだ】
【教えてよ。見てきた世界を】
 彼は軽く歌う。英語が聞き取れない。
【朗読しようか?】
【お願い】
 1,2,3,4,5,6,7
 よい子は天国へ
 東に飛ぶ子
 西に飛ぶ子
 カッコーの巣を越えていく子
【カッコーの雛って、別の鳥が騙されて育てさせられるんだよね】
【そうだよ】
【別の鳥はそんな雛がかわいいの?】
【カッコーに限らず、弱い生き物はだいたいかわいい姿をする。雛や子どもはかわいい姿をする。なぶり殺そうとする強い生き物の良心がとがめるように。そのせいか、弱い生き物はかわいらしさに惑わされない。自分より弱い相手を、特に必要もなく殺すことがある】
【天国に行けないね】
【うん。気の毒に。君、僕と一緒に海を渡る?】
【外国の人はそういうこと言ってくれるから好き】
【赤い靴をあげるよ】
【行けない。僕はカッコーの巣を越えていく】