※本書より『クリスマスのネタバレ』の抜粋
おとぎ話の中で語られるサンタクロースはいないのだよ、ということに気づくのが皆何歳くらいの時なのか分からないが、とりあえず私は小学校高学年くらいの頃には知っていた。というのも、母親が普通にばらしたためである。そして、そのネタバレと同時に我が家のクリスマスプレゼントは物品ではなく現金になった。ここで重要なのは図書カードやクオカードといった「まだ贈り物として許せる範囲」で収まっていないところだ。現金だぞ。現金。しかもポチ袋や祝儀袋にすら入っていない。ピン札でもない。我が家はいつから給料が現金支給の零細企業になったのだろう。 私の父親はまだ一般的な感性をもっているが、母親はどこか下手に頭が回るために「親としての立ち位置」と「良き理解者としての立ち位置」を混同している気がある。今回の事案も、その母親の倒錯が招いた結果と言えよう。 当時の本人としてはその判断は正しかったと信じて疑わなかったらしいのだが、今頃になってなぜか後悔するらしい。 「夢を壊してしまってごめんよ」と謝罪されたが、もうすぐ三十路を迎えようとする子に何を言っても、あの頃のサンタクロースは戻っては来ないのである。
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