出店者名 恵陽
タイトル うたたね 動物となごみアンソロジー
著者 恵陽 他
価格 800円
ジャンル 大衆小説
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紹介文
人と動物の触れ合いをテーマに描かれた、18名の執筆陣とカバーイラスト1名によるアンソロジーです。楽しかったり、切なかったり、ちょっと不思議だったり。動物スキーな方、もふもふしたいしたい方、いかがですか?
執筆陣(敬称略) ウッパ/風城国子智/黄鱗きいろ/青波零也/鳥井蒼/良崎歓/雪原歌乃/遥飛蓮助/遠藤さや/山川海蹴/帰鴉/高麗楼/十一/暁湊/アヤキリュウ/たつみ暁/藤原湾/恵陽 カバーイラスト/翠静藍

 今日は、ぼくの友達をしょうかいします。メスのネコで、名前はミーコと言います。
 ミーコは頭がいいので、人間の言葉を使って話します。でも、パパやママには、ミーコの言葉は、ネコの鳴き声にしか聞こえません。友達のコウタくんにも、マリちゃんにも、ネコの鳴き声にしか聞こえないそうです。
 ぼくはミーコに聞きました。
「どうしてぼくにだけ、ミーコの言葉が分かるの?」
 ミーコは、大きなあくびをして言いました。
「さあね。坊やにだけアタシの言葉が通じんなら、それでいいじゃないか」
 ミーコは、ぼくのことを名前でよびません。最初はぼくを『アンタ』とよんでいましたが、今は『坊や』とよびます。
 初めてミーコに会ったのは、音楽のテストで歌う『カエルのうた』を、通学路のとちゅうにある公園で練習していたときでした。
「カ・エ・ル・の・う・た・が、き・こ・え・て・く・る・よ」の後に、「カ・エ・ル・の・う・た・が、き・こ・え・て・く・る・よ」と、ぼくの後に続けて歌う声が聞こえました。とても楽しそうな声でしたが、周りを見ても、ぼく以外にだれもいませんでした。
 次の日も公園で練習をしていると、また、ぼくの後に続けて歌う声が聞こえました。
 今度は周りを見るだけじゃなく、遊具やしげみの中もさがしました。でも 、ぼく以外にだれもいませんでした。
 ようかいがぼくにイタズラをしているんじゃないかと思ったとき、また「カ・エ・ル・の・う・た・が、き・こ・え・て・く・る・よ」を歌う声が聞こえました。前の日に聞いた声と同じで、とても楽しそうでした。
 声のする方へ行くと、へいの上で目をつぶって、気持ちよさそうにねそべっているねこがいました。それがミーコでした。
 ぼくは、ミーコが「ゲロゲロゲロゲロ、くわっくわっくわっ」まで歌い終わり、起き上がったときによび止めました。
「ネコさん待って!」
 ぼくに気づいたミーコは、目を細くして、ぼくの顔を見下ろしていました。そのときのミーコはノラネコだったので、ぼくからすぐにげられるように、体を低くしていました。
「あの、えっと、さっき『カエルのうた』を歌っていたのって、本当にネコさんなの?」
 ぼくがあわてて聞くと、ミーコは二回まばたきをしました。

(「ネコのミーコと『ぼく』の話」遥飛蓮助さまより)