あるとき、イオは感極まって言いました。 「テオのアコーディオンは本当に素晴らしいよ。俺がこうなって欲しいと思ったところで、ちょうどその通りになるんだもの。不思議だねえ」 その晩の演奏は、本当に良い出来でした。アコーディオンの音色は、イオの歌声にぴったり寄り添うように、時には重厚に、時には子犬のように軽やかに鳴りました。そして店内には割れんばかりの拍手と歓声が鳴り響き、イオの身体はまだその余韻に打ち震えていました。 「そりゃそうさ、僕のアコーディオンはイオのためにあるんだから。イオの歌がなければ、僕は何にも弾けやしないよ」 はにかみながら言うテオに、イオは負けじと返しました。 「俺だってそうだ。テオが弾くアコーディオン以外で歌おうたって、まるで駄目なんだ」 それは、心の底から沸いて出た本当の言葉でした。イオはたまに他の楽器弾きと歌うこともありましたが、その行いはただ、彼にテオの尊さを再確認させるだけでした。 テオほどに彼の歌を理解できる者など、この世に存在するはずがありません。だって二人は母親のお腹の中にいる頃から、片時もそばを離れたことがなかったのですから。 「そんなことないよ。僕なんかいなくたって、イオの歌は本当に素晴らしいよ」 テオは、アコーディオンの鍵盤を指でなぞりながら、しみじみと呟きました。 「でも、僕はイオと一緒に音楽をやるのが好きだよ。できるものなら、いつまでも続けていたいものだねえ」 「何言ってるんだよ。それじゃまるで、もう一緒に歌えないみたいじゃないか」 と、イオは半分冗談のつもりだったのですが、テオときたらさびしく笑みを浮かべるだけでした。 イオは恐ろしくなって、とっさにテオの手を取りました。まずその冷たさに、それからその頼りなさに彼はひやりとしました。テオはアコーディオン弾きにふさわしく、小さく美しい手をしています。それに比べるとやや無骨なイオの手は、今にも弟の手を握りつぶしてしまいそうでした。 イオはそっと手を離し、テオに言いました。 「ずっとずっと、一緒さ。なんせ俺たちは双子なんだから」
(「アコーディオンと双子」より)
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