結婚式は、滞りなく終わった。 月岡家は、市内で小さな花屋を経営している。普通は、披露宴の最後に、花嫁がキャンディフラワーを配るのだが、さすが花屋の結婚式だけあって、本物の赤い薔薇を一輪ずつ配った。 克巳がその様子を見ていると、文彦が、余った薔薇を何本かマキに渡していた。 すると。 マキは、コンシェルジュデスクに駆け寄り、その薔薇の一本を克巳に差し出した。 「今日はありがとうございました」 克巳は、少々驚いた。 「私に、ですか?」 「ええ。お世話になったから」 克巳は微笑んで、花を受け取った。 「こちらこそありがとうございました。お気をつけてお帰り下さいませ」 マキは照れたような笑顔を見せると、頭を下げて、その場を離れた。
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