分かり易く対象外にしてもらう方法ってないかな、という橙の言葉に莉々子は眉を上げた。またなにかあったのか。橙は時折、面倒なのを引っかける。弱々しい訳ではないが、ちょっとこう儚げな感じが、いい時は庇護欲、悪ければ嗜虐欲を煽るのだろうなと莉々子は推測している。セカンドインプレッションが押しかけ看病だったので、莉々子は今更騙されない。橙は結構頑固でしたたかだ。 「エー、指輪じゃない? おそろい指輪。間違いないね」 とにかく具体案を出してみる。ただし「指輪関係なく絡んでくるのいっぱいいるし、むしろワザと狙うロクデナシもいそうだけど」と続けて、橙の反応を待った。おお、と顔が明るくなって満更でも無さそうだ。が。 「指輪かあ……。要さんに言って、通じるかなあ」 今更過ぎて、話題に上げるの白々しいなあと、口角が下がる。 「結婚しないの?」 何気ない質問に、橙がしまったという顔を向ける。 「あー、うん、えーと、できないの」 「はあ? 歳の差で親に反対されてるとか? いやこっちももう、そんな歳でもないか。実は水原さんに正妻がいて、ともるんはあいじ…ん………」 「えっ」 かなり思いがけない推測だったらしい、橙に絶句された。そのまま笑いだし、やがてどうしようかなと俯いた。 「あのね、要さんのせいじゃないの。―――りりちゃんに、軽蔑されるの、怖いな」 「何さ」 ギクリとした。それはまるで自分が秘めてきたものに通じる。 「えーと。私、姪なの。要さんの姉が、私の母」 「はあん?」 一瞬、言われたことが理解できず止まった。なにか駄目なところがあったか? あんまり聞かないけどそれは。 「―――三親等か!」 社会科で習った婚姻のモデル図がさあっと記憶から浮き上がる。と同時に目の前の事例より姪に手を出したサイテーな叔父という映像が脳内を駆け巡った。表情が険しくでもなったのだろうか、橙が慌ててフォローしてくる。 「他にいなかったんだよ、どうしても」
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