あれは、やたらと冷える冬の朝だった。 一月五日。 鴉原市が誇る名峰、都賀ノ山。 その麓の、冬季は通行止めになっている登山道の序盤のところで、サイジョーは見つかった。 間違えて登ってきた登山客が見つけてくれたという。 警察から連絡を受けた俺たちは、霊安室で親友と再会した。 雪に埋もれていたというその遺体は透き通るように白く、不謹慎にも美しかった。 美しいと、思った。 華凜はサイジョーの顔を見た瞬間からえづくように泣き始め、それを希一郎が連れ出す。 斎城飛鳥に間違いないかという問いに俺と松馳が頷けば、そうですかと乾いた言葉が返ってきただけだった。 サイジョーは元々色白だったが、それでもまさかこんなにではない。 去年の事故で輸血を受けていたときだって、ここまで白くはなかった。 警察の話では、木にもたれた姿勢で三日程度経過したせいで血が全て腰のあたりに集まり、顔は特に白くなっているらしい。 遺体に触れてもいいと言われたので、そっと頬を撫でてやった。 変わらずすべすべな肌が、とても冷たかった。 いつもと少しだけ髪の分け目が違うのを整えてやれば、今にも起き上がってへらへら笑いそうな気さえした。 そんなことは、もちろんないのに。 分かっていても信じられなかった。
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