出店者名 cieliste
タイトル あくだま
著者 壬生キヨム
価格 500円
ジャンル JUNE
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紹介文
「あくだま」とは、プロレスなどの「悪役キャラ」の「悪玉」のことです。
「あくだま」役の人間と、「ぜんだま」役のきつねの妖怪が戦ったり
恋愛したりする物語です。

文庫サイズ200p・カラーカバー・帯付き

目次

第一話 ペペロンチーノ峯田 オークションにかけられるの巻
第二話 たわむれに恋はすまじ
第三話 心の優しい鬼の住む家
第四話 ペペロンチーノ峯田 生贄になるの巻
第五話 やきにく
第六話 反則だらけ

こちらで第一話とwebで連載していた、今となっては草稿的なものが全文読めます http://upppi.com/ug/sc/list/search/?search_target=&word=%E3%81%82%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%BE

「ほんとうに、悪かったとは思ってるよ、ぼくだって。なんていうか、最低限の礼儀ってのがあるよね、こういうのって。でも、仕方がないじゃない。だいたい、ぼくは、生まれてこの方、そりゃあハーフだガイジンだって言われて目立ってきたけど、それを隠したいから覆面して戦ってるわけじゃないし、顔を出していないことが卑怯だなんて思ってないよ。でも、あんなふうに言われたんだから少しくらい怒ったっていいじゃない……」
ペペロンチーノ峯田こと、本名峯田・ペペ・螢人は、拝むように頭の上で両手を合わせて、目の前に立つ浮葉に頭を下げていた。しかし、浮葉はその端正な顔を歪ませて苦々しい内心を隠そうともせず、腕を組んで時々ため息をついている。
「言い訳はそれだけか」
「うう……わかってるよ、浮葉にお願いしても仕方ないよね……」
「わかってるんじゃないか。それで、石川の爺さんが面白い提案をしてきたぞ」
「面白い?」
 峯田は顔を上げると首を傾げた。その『提案』は、自分にとって全く面白くないということは容易に予想ができた。
「来週の冥闇会の試合後に、パフォーマンスをするらしい。ペペロンチーノ峯田を一晩自由にできる権利をオークションにかけるそうだ」
「『そうだ』じゃないよー!」
 峯田は頬を引きつらせながらソファに倒れ込んだ。
「安心しろ、蚊鳴屋も金を出すそうだ」
「浮葉、さっきから伝聞ばっかだね」
「俺に何とかできる問題じゃないからな」
「ごめんね」
「俺に謝っても何の解決もしないからやめておけ」
 そう言って、彼は眼鏡をかけ直し峯田から目をそらした。石川氏はあくまで『提案』としたのだろうが、それを拒否する権利などこちらにないことは容易に想像ができる。峯田が壊した闘技場はランクAの陰陽師が数人がかりで質の良い結界を張ったという高級品で、ただ単に同じ石の床を用意すればいいというものではない。
「で、ぼくのスポンサーはいくらくらいなら出してくれるの?」
「せいぜいこれくらいだ」
 浮葉は三本指を立てた。
「さん……じゅうまん?」
「三千円だ」
「あれっ、予想落札価格ってそんなに安いの? ぼくっていちおう処女なのに? 妖怪が見える珍しい人間だよ? しかもハーフだよ?」
「出しても三万かな。まあ、その場合お前の賞金から引くから」
「うう……。ぼくの一晩は浮葉がいいエンディングを見るためだけに課金したソーシャルゲームより安いんだ……」


もふもふキュート、ちょっぴりはらはらなとびっきりのエンタメボーイズラブ
京都の地下格闘場で夜な夜な行われるという妖怪プロレス。
唯一の人間でありながらリングに「あくだま」役として上がる覆面レスラーのペペロンチーノ峯田(まずこのネーミングからおかしい)は胸に貼ったお星さま型のシール通称「乳首ガード」が目印。(この時点で相当面白い)
そんな峯田(26歳フリーター、浜麦にしてみれば恋のライバルな相手? のもとに居候中)に思いを寄せるのは、人間年齢では八つ年下のもふもふ白狐の妖怪で「ぜんだま」レスラー(人間の姿では褐色のキュートな美青年)浜麦。
お互いに思いあっていることは明らかなのに、優しい性格も相まってか峯田への想いを告げられない浜麦は勢い余って(?)序盤早々からオークションに賭けられた峯田を落札し、甘い一夜を過ごそうとするのですが……。

恋のときめきもそこに潜むちょっとエッチな気持ちも絶妙なさじ加減でキュートに、時にはらはらどきどきさせながら読ませる展開はキヨムさんワールドの真骨頂。
京都の街で人間と共生しながら生きる妖怪たちとの関わり合い、興行を裏で取り仕切る大人たちの思惑――と、はらはらどきどきの要素を絶妙に散りばめつつ、どうにも締らない二人のもどかしい恋をいつしか応援したくなります。
どこかとぼけた味わいを感じさせるキャラクターの掛け合いは男の子たちならでは。
ボーイズラブの楽しさに溢れた本作は「BL」になじみがない人もきっとひとたび触れれば虜になる、ここでしか味わえない楽しさがぎゅうっと凝縮されたとっておきのエンターテイメントに仕上がっています。

最後にはもちろんとびっきりふたりらしさに溢れたキュートなラブシーンも待ち構えておりますので、どうぞお楽しみに。
推薦者高梨來