出店者名 つばめ綺譚社
タイトル ミーティングは302で
著者 紺堂カヤ・伴美砂都
価格 400円(別冊付・分売不可)
ジャンル 大衆小説
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紹介文
大学1年生の鷲羽友久は、サークル勧誘祭の日、同級生の赤熊凛子と出会った。
自身の持つ”感覚”に導かれるように、友久は彼女と同じ写真部に入る。
その出会いは、ちょっと不思議な青春の日々の始まりだった。

リレー小説形式で一年に渡りウェブ連載していたものを冊子化。
紺堂カヤ書き下ろしストーリー等を収録した別冊をセットに。

鷲羽友久の好きなもの。
焼うどん、レタスの中華スープ、美空ひばり、山田洋次の映画、深夜のファミレス。
鷲羽友久の嫌いなもの。
チョコレート、照り焼きチキン、ヒーリングミュージック、スタローンの映画、結婚式。
そんな鷲羽友久は大学生になったばかりである。
宿井成徳大学、通称・宿徳大学の、理工学部建築学科。
最寄りの駅から十キロ離れた丘の上の、広大な土地にあるこの大学へ行くには、その最寄りのH駅から市バスに乗り換えなければならない。
学生たちは登校時間に合わせて駅に集まるため、その時間帯のバスは乗車率200%のすし詰め的な混雑となる。
(……大学に登校、って何か、表現として違和感だよな)
呼吸も満足にできないバス内の不快さをできるだけ感じないようにするため、友久はそんなことを考えた。

(中略)

売店でコーラでも買おう、とちょうど目の前に現れた階段を下ろうとしたとき、後ろから、細い声に呼び止められた。
「あの」
「……はい」
(俺、だよな)
周囲に人影がないのを確認してから、友久は返事をした。なにせ、声をかけてきたのは見知らぬ女子学生だ。
黒髪を左耳の下で束ねた小柄な女子学生は、ただ返事をしただけでじっと自分を見おろしている友久に、少々怯えたような様子を見せたが、それでも、遠慮がちに口を開いた。
「すみません、写真部の、部室は、どちらでしょう……」
「写真部、ですか」
友久は手元のサークル案内冊子をめくって、写真部の項目を探した。三号棟の、302教室。
「ここ、みたいですよ。302教室」
冊子を目の前に大きく広げると、彼女は少し屈むようにしてそれを眺め、位置を確認していた。
そのとき。
チカッ、と友久の眼の奥が揺らいだ。眩暈に似た、けれども眩暈とは明らかに違う感覚。
(またか)