冬の夜の寓話
むかしこの地球で 僕の一番近くに居るのが きみだったことがあってね
とはいってもきみが居たのは僕の部屋から三00キロも離れたとなり村で きみは部屋に一人でパソコンに向かいイギリスのバンドの音楽を聴いていて 僕は一人きりで住んでいてパソコンに向かい日本のバンドの音楽を聴いていた
その時僕の膝の上には飼い猫が居て そして僕の体から全方位に拡がっていく仮想の球の表面に 一番早く触れてくれた人はきみだったんだ
きみの村にも僕の家の上空にもひどい吹雪がやってきていて 発する息やその熱や言葉や音や気配はすべて 一メートルも行かないうちに掻き消されてしまった
きみは僕に気づくはずなく 僕もきみに気づくはずなく そして二人は一生出会うこともなかった
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