出店者名 ペーパーカンパニー
タイトル bonologue
著者 正岡紗季
価格 650円
ジャンル エッセイ
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紹介文
料理でお話をしよう、おいしいつぶやきボノローグ第一号。別名煩悩のログです。
この号は大阪は北浜にあるフランス料理店、Unique(ユニック)をとりあげ、ある日のランチコースをたどります。

 ユニックは大阪市にあるフランス料理店です。中央区伏見町、伏見ビル一階にお店はあります。この伏見ビル、大正十二年に建てられたレトロな洋館で、国の有形文化財に指定されており、丸みを帯びた外観は当時のモダンな空気を今に伝えています。
 所在地は伏見町、最寄り駅は北浜駅で、大阪證券取引所などにも近い。言うなれば経済の中心エリアであり、繁華街からは少し離れた場所、オフィスビルの立ち並ぶ界隈である。また古くから薬の街で今も製薬会社がひしめき、少名彦名神社もあります。
 オーナーシェフの中山大輔氏は昭和五十年の生まれ、独立したのが二〇〇八年十一月、三十二歳のときでした。それまでにはホテルニューオータニ、リーガロイヤルホテルで修行を積み、かのシャンボールに配属されたそうです。高級食材を扱い手間という人件費をかけた、高単価店を経験をなさったということです。その後ラクロッシュシェフズルームにてスーシェフまで勤め上げられました。ラクロッシュシェフズルーム、ラクロッシュともに現在は閉店しています。
 ラクロッシュと言えば、ポワンの本多シェフも修行したお店。予約が取れなくてなかなか行けませんが、ポワンの前に出しておられたアキュイールというレストランがとても好きでした。
 星をとると如実に予約が取れなくなりますね。
ラクロッシュシェフズルームがあったのは伏見ビルの一階です。あれ? そうなのです。跡地をそのまま弟子の中山シェフが引き継いでユニックをオープンさせたのでした。
 ユニックとは唯一無二の、という意味のフランス語です。英語で言うところのユニークですね。ユーモラスと混同しがちですが……確かに人間味のある楽しさはあります。風変わりとか奇を衒うものではありません。
 さて、ユニック。独自性がどういうところにどうあるのか。私が思うのは、きれいなこと。料理の範疇での造形美、過ぎた野趣は面取りし、滋味を生かしたクールビューティ。ナイフを刀に持ち替えたら武士姿もさまになるでしょう。
 ご本人が口にするわけではありませんが、味は変わらなくても見た目に影響するならどんなに手がかかることも厭わない。そのためには余計なことをしない。ミニマムな表現は禅的にも見えます。禅も実は削ぎ落とした上にユーモアを一滴垂らすもの。ナイフを念珠に持ち替えたとしても、お肉やお魚を食べさせてくださいね、シェフ。