ダンサーになりたい、と願う電柱がいた。 彼の心に火をつけたのは、通りすがりの学生たちが話していた不思議な噂だった。 曰く、この町には電柱のダンスサークルというものがあるらしい。 その集団は、プロのダンサーになることを目標にして、夜な夜な高台にある公園で練習を行っているという。 うららかな春の午後、通学路の片隅で、電柱の胸はドキドキと高鳴った。 (そんなサークルがあるなんて!) 興奮のあまり、思わず身ぶるいしてしまう。送電線の上で休んでいた鳥たちが、驚いて一斉に飛び去った。 (すごいぞ、電柱でもダンサーになれるのか! ぼくらに不可能なんてないんだ!)
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