出店者名 パレオパラドキシア
タイトル ことばのざんきょう vol.1
著者 海老名絢
価格 200円
ジャンル 詩歌
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紹介文
個人詩誌第一弾。
詩を5編収録。
(B6・表紙込み24p・2017/4/16発行)

【目次】
時計が壊れて/明日を迎えに/頼りない城主/ビル街のさかな/水のうつわ

http://aya.oops.jp/o/zankyo01.html

   時計が壊れて

太陽電池式のデジタル腕時計が壊れて
いくら光を当てても時刻を表示しないから
わたしは置き去りにされている。

今日が何曜日だったか、もすぐ思い出せなくて
空白に圧し潰される。
電池パネルに光が当たらない仕舞い方をした、罰としては
大げさすぎる日々の感覚の不在。
ごくありふれた日常生活防水のアナログ腕時計をつけて、どうにか
ずれていく時間をとどめようと。

生活するのに時間を計る、知る必要がありますか、
それはあります、
うどんの茹で時間がわかりません、
連絡に適した時間がわからなくてびくびくしながら連絡を取る/待つことになります、
電車の発車時刻がわからなければどこへも出られません、
いつ来るかしれないものを待つのは恐ろしい時の過ごし方です、
けれど、眠れない夜だけは掛け時計が止まればいいと思います、

時間が身体を滑っていって
気がつけば昼、ふと見ると夕暮れ、ひとりのまま夜更け、
流れていくものとして流れていってしまう、
すくい取ろうとしても最後の滴がどうしても皿に残る、
ポタージュスープのなめらかさで。

切り離されたような小さな家の中と大きく広がる外の世界では
時間の流れ方が違うのかもしれない、
でも一分はどこにいても一分で、
わたしはその一分を測る術を失って
台所で簡単な食べ物を自分に作ってやることもできずに立ち尽くしている。