北向きのくちびる北向きのくちびるに言えなかった言葉を詰めて海へ来た。波音だけで静かな汀、息を求めて薄く くちびるをほどけばこぼれ落ちていく。遠く遠く ボトルメールにもならない。北への風に乗っていくそれらは海に抱かれないまま、雲に紛れている。つづくひかりが眩しくてこの寒さをどう受け入れようか。波しぶきがひとみを閉ざす。