ひかりと風
ベランダに出て、 冬のひかりと夏のひかりは違うのだということを 刻んでいた。
できることなどないように思える日にも、 くり抜かれたすべての窓に等しく降りそそぎ、 骨にまで届く。
窓の向こう側にも生活はあって、 洗面台の石鹸のすり減り方、 服のしまい方、 自分の食べさせ方、 間取りだけ同じであとは何も共有しない隣人とは 一度もすれ違わない。
聞いてほしいことがあった。 それは昔々のことで、 もう話す意味もないのだろうけれど、 わたしの水門を超えようとするので、 感傷にほど近い歌を小さく歌った。 薄い雲越しのやわいひかりに 掻き立てられて。
ゆうべの風が 今頃になって部屋を吹き抜けていく。
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