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▼10月1週

福岡○-×京都
3点

お題
人は傷つきながらも
恋をすることをやめないのか

「今夜、会いに行くよ」
 今頃、綾へ手紙が届いている筈だ。
 最近なぜか彼女へのメールが届かないので郵便にしたが、更に二人の愛が育まれる。さすが綾だ。
 深夜、綾の家の門を入る。家族が留守なのは愛の力で知っている。玄関の前に立ち、愛の力で入手した合鍵を使う。おっと、その前に絶縁手袋だ。玄関口の不自然な水溜りを見れば、ドアノブに電気罠が仕掛けられているのはすぐわかる。
 中に入り、足元のワイヤートラップを解除する。天井から降るナイフを避け、落とし穴を飛び越える。綾は、愛の試練を課しているのだ。しかし、ゴミ袋に入っていた『罠のすべて』という本で僕は気付いていた。綾のヒントだ。
 ついに綾の部屋に辿り着く。扉に仕掛けられた指向性対人地雷を解除し、部屋に入る。
 その途端、家全体が崩壊した。柱に下半身を押し潰されながら、僕は腹から噴出する血でハートを書いた。
 綾、照れるなよ。

人は傷つきながらも
恋をすることをやめないのか


電話を閉じかけた午前3時
通話口の向こうでそんなこと呟くから
わたしは思わず笑ってしまって。
この話も終わりにしたいのに。筋違いな結末ばかりで、それナシ、って言って、
欠けた月の円周をなぞって
ありもしないふたりの想い出を繋げる夜半の寝覚め。
おなかをしくしくさすって、
いない赤ちゃんを育てるみたいに。

痛いの、痛いの、飛んで、いけ。ない。
溶けかけたチョコレートを口の中、転がすみたいな声がさわって。温く沈む体温のなか。
電話帳をなぞる指先がすこし、
粘る

ねえ、わたし、この宇宙が
どこにもつながってない、ってこと証明したい
途切れがちな音声がひたすらに遠さで
眩暈がするほど明滅しているのよ、ここでは。
ビルの高さも。飛行機を迎えようと必死に赤くて。
ねえ、わたし、あなたが
なにも知らないってこと証明したいの
肘から先、切り離して飛んで。入れ替わればいいのに。手のひらも。
あなたの声が、
わたしのおなかの上。
いびつな、円を描いて。

(先攻・福岡)あしゅりん-(後攻・京都)軟投派劇場型谷竜一

-審査員:暇人です

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