結婚願望のある童貞の男と寝てみた。
その最中、ずっとあたしの眼を見てた。
じんじんと体が鳴っている、日曜日の午後。
あたしは飲みかけのカプチーノをそっと置いた。
ノリタケの白い受け皿と、使われなった角砂糖。
白いミルクの泡で描かれたハートが、ぐにゃりと曲がっている。
あたしは今まで寝た全ての男が好き。
妙にイクまでが長い人や、なぜか途中でしぼんでしまった人、
全然、的を得なかった人や、自分の名前すら忘れさせてくれた人。
そんなのも全部ひっくるめて、みんな愛おしいと思う。
結婚願望のある童貞の男は、J-POPが好きだった。
JUDY AND MARYはJ-POPを変えたと言っていた。
あたしが終わった後にタバコを吸ったら「吸うの?」と聞いてきた。
その男の全てが、なんだかくすぐったかった。
誰と寝ても文句を言われない、この国の空は青いと思う。
世界には、正常位しか知らない人だっているのに。
結婚願望
「えっ! 逆立ちはできないわ」
「歓ぶときの声が大事なんだ。きみは最高だよ」
「前の彼、上手じゃなかったけど、68歳だったけど、わたし、いつもecstasyだった」
マンションの両隣や真上の部屋から、
スナグルやメイクラブの声が聞こえてくる。
ダクトの配管が変なの?
毎晩、毎晩‥‥
わたしが、男だったら、興味あったかも知れないけど、
女には、他人の閨事の声なんて。
「アーケオシリス、コルダイテス、ヒロノムス、フズリナ、リンボク」「なに?」
「前戯いくつ知ってる? 今夜、全部してみて」
「昼間、爪を切るところから始まるんだ」
だれかが生まれたがっている――
だから、女も男も睦み合う。
でも、ヒトの性交は、インチキだよ。
みんなベットを汚(けが)してる。
「ね、呼んで、わたしの名前を!」
「インド人はね、そのまま動かないんだ」
「今夜は、なにか新しいことしたい‥‥わたしが、あなたによ」
なんだか、わかんないけど、結婚したくなってきちゃった。
(先攻・香川)Pookie Diamond-(後攻・名古屋)みおよしき