過去の結果

▼9月1週

大阪×-○横浜
5点

お題
初恋の彼氏と離れたり、
犬派なのに子猫を育てるはめになるみたいに、
最近新しい自分を見つけることが多い。

伊達眼鏡を掛けて、元彼を食事に誘った。
待ち合わせ場所に着くなり、彼は目を丸くした。

コンタクト辞めたんや、眼鏡の方が、か、可愛いで。

どもる口調が気持ち悪かった。



振られた時の捨て台詞を思い出した。

見透かす女は嫌いや!

じゃあ目の悪い子になりますよ。



親兄弟にバカにされ続けた眼鏡を掛けたのはトラウマ脱却の為だ。
でもあんたを試す為でもあるんだ。
見えない振りをすると何かが見えるから。
何かに気付き何かに出会うから。

大食いの彼が摘む程度でご馳走様をした。
帰りの車で押し倒された。
眼鏡は外すなと言われた。
へぇ、あんた眼鏡フェチなんや。
元彼の性癖を今更知っても得にはならない。
だけどあたしにとっては新境地開拓だ。
今あたしが生きてる世界はあんたと居た頃には考えられなかった場所だ。
始めたばかりだけれど性に合ってるみたいだ。

有難う、と言うと彼は目をパチパチさせた。
今のあたしには発見が生き甲斐。
またひとつ成長した。
そう、嬉しい事に

初恋の彼氏と離れたり、
犬派なのに子猫を育てるはめになるみたいに、
最近新しい自分を見つけることが多い。


そんな、ありふれた話がえんえんと続いて、
思いついたそばから、新しいあたし、
が、小さな唇にあふれてくる。
それを僕に聞かせて、この子はどうしたいのだろ。

閉じた口のなか、舌の上で処方箋を書く。
明日のあたし、は
新しいあたし、ごろごろ。
飴玉みたいに転がしながら、耳障りよく丸く。

ベランダで亀を飼いたい。
うち、ペット禁止だけどさ。

男だとか、犬だの猫だの。
さんざん並べて、ようやく亀か。
次はサボテンあたりかな。
結んだ唇に、黒く笑みがのってしまう。

目の前の娘を、暇つぶしにしゃぶりながら、
どんな自分を作ろうか、考える。
明日の、じぶん。

いつも、何か語ろうとするたびに唾液が溜まって、
気づくと口腔は底なし沼みたく、
真っ暗になって、
黒い唇を、ゆるやかにひらくと、
にちゃり、
って、唾液が鳴いた。

たぶん、僕にしか聞こえてない。

(先攻・大阪)タムラアスカ-(後攻・横浜)しゅう

-審査員:みよ

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