十一月都々逸「葉」

四つ葉を探してふたり歩いた思い出みたいな冬の空

散ったところで何度ものびるクズの色した自己主張

とぎ澄まされたカヤの葉みたいに言葉で刺したい別れ際

大麻みたいに酔わせてみてよどうせこの世はわるいから

どうせ死ぬなら葉っぱになりたい誰も知らない道端の

       ■ にゃんしー

十一月雑詠

末枯や紙幣に指がねばりつく

荒星や地上に届く飛機の音

小春日を透明にする窓がらす

神をらず蹠に痼る血は鉄に

南天の実と遠州の陶房と

刀身へ女ら冬の貌映す

城下町へ蜜柑の実る木を載せて

 ■ 牟礼鯨

十一月題詠「葉」

これはもと何枚の葉かティーバッグの中はよく見えない緑茶

これはよく見える茶漉しでこしているこれから立てる安いお抹茶

この中にも葉はあるのかと振ってみるインスタントミルクティーの粉末

残された葉書の画像データをみ君に手紙を送りたくなる

樹であった葉は確かに樹であった落ちたときにはもうただの葉で

       ■ 朝凪空也

兼題「葉」

 ■

木の葉散るネパールの紙棚奥に
          牟礼鯨

  ■

葉脈に秋の日暮れを見せてやる
           泉由良

十月雑詠

風力発電機一基回らず渡り鳥

水始涸よジャム瓶底に闇

亀虫や階下の人は無口なり

ジェイコブの梯子まきとる秋の潮

山霧を鬻ぐよ無人販売所

次郎柿や鉱山雨に濡れてゐて

秋霖や有楽街のあぶれ猫

秋雨の底ひに藍のマッチ箱

  ■ 牟礼鯨

十月兼題「かそう」

 ■

冷まじや鬼門に墓地の家相とて
          牟礼鯨

  ■

秋晴れのひかりに透けてゆく火葬
          泉由良

十月題詠「かそう」


 仮想

金を出し時間を使いバーチャルの世界に逃げて、逃げて、逃げて

 仮装

化粧してそれなりに見える服を着て仮装し武装し息を殺すの

 火葬

肉焼ける匂いもなにもわからずにただ煙だけがのびる火葬場

 下層

あす食べるお米がなくて無保険で電気もガスも止められました

       ■ 朝凪空也

十月題詠「仮装」

タバスコで これでもかと仮装した イタリアン 案外食べられた 学生の頃

そばうどん だし気(け)のものは ことごとく 一味で仮装 これまた美味

せんべいは 塩もいいけど しょうゆ味 仮装で変わる 腹持ちの時間

カレーなら ナンに装うか ライスにするか どちらの仮装も 捨てがたし

ニンニクは 家族みんなが 避けるから 私しかできない 美味なる仮装

       ■ 偲川遙

十月都々逸

「花葬」

葬式で知った花の名前に生きた理由を思い出す

「仮想」

忘れたままの思い出だけが今の僕には大切で

「火葬」

灰になるまで愛していたよたとえば空が青くても

「仮装」

恋人のふりを装っていたほんとは全然わるかった

「カソウ」

無色無臭を水に溶かしてあなたに飲ませる苛性ソーダ

       ■ にゃんしー