四つ葉を探してふたり歩いた思い出みたいな冬の空
散ったところで何度ものびるクズの色した自己主張
とぎ澄まされたカヤの葉みたいに言葉で刺したい別れ際
大麻みたいに酔わせてみてよどうせこの世はわるいから
どうせ死ぬなら葉っぱになりたい誰も知らない道端の
■ にゃんしー
四つ葉を探してふたり歩いた思い出みたいな冬の空
散ったところで何度ものびるクズの色した自己主張
とぎ澄まされたカヤの葉みたいに言葉で刺したい別れ際
大麻みたいに酔わせてみてよどうせこの世はわるいから
どうせ死ぬなら葉っぱになりたい誰も知らない道端の
■ にゃんしー
末枯や紙幣に指がねばりつく
荒星や地上に届く飛機の音
小春日を透明にする窓がらす
神をらず蹠に痼る血は鉄に
南天の実と遠州の陶房と
刀身へ女ら冬の貌映す
城下町へ蜜柑の実る木を載せて
■ 牟礼鯨
これはもと何枚の葉かティーバッグの中はよく見えない緑茶
これはよく見える茶漉しでこしているこれから立てる安いお抹茶
この中にも葉はあるのかと振ってみるインスタントミルクティーの粉末
残された葉書の画像データをみ君に手紙を送りたくなる
樹であった葉は確かに樹であった落ちたときにはもうただの葉で
■ 朝凪空也
■
木の葉散るネパールの紙棚奥に
牟礼鯨
■
葉脈に秋の日暮れを見せてやる
泉由良
風力発電機一基回らず渡り鳥
水始涸よジャム瓶底に闇
亀虫や階下の人は無口なり
ジェイコブの梯子まきとる秋の潮
山霧を鬻ぐよ無人販売所
次郎柿や鉱山雨に濡れてゐて
秋霖や有楽街のあぶれ猫
秋雨の底ひに藍のマッチ箱
■ 牟礼鯨
■
冷まじや鬼門に墓地の家相とて
牟礼鯨
■
秋晴れのひかりに透けてゆく火葬
泉由良
金を出し時間を使いバーチャルの世界に逃げて、逃げて、逃げて
仮装
化粧してそれなりに見える服を着て仮装し武装し息を殺すの
火葬
肉焼ける匂いもなにもわからずにただ煙だけがのびる火葬場
下層
あす食べるお米がなくて無保険で電気もガスも止められました
■ 朝凪空也
タバスコで これでもかと仮装した イタリアン 案外食べられた 学生の頃
そばうどん だし気(け)のものは ことごとく 一味で仮装 これまた美味
せんべいは 塩もいいけど しょうゆ味 仮装で変わる 腹持ちの時間
カレーなら ナンに装うか ライスにするか どちらの仮装も 捨てがたし
ニンニクは 家族みんなが 避けるから 私しかできない 美味なる仮装
■ 偲川遙
「花葬」
葬式で知った花の名前に生きた理由を思い出す
「仮想」
忘れたままの思い出だけが今の僕には大切で
「火葬」
灰になるまで愛していたよたとえば空が青くても
「仮装」
恋人のふりを装っていたほんとは全然わるかった
「カソウ」
無色無臭を水に溶かしてあなたに飲ませる苛性ソーダ
■ にゃんしー
二〇一七年十月題「かそう」