投稿詩 on PQs! - 第6ラウンド-
6月28日開始〜7月4日零時〆切です。(投稿順・タイトルをクリック!)
「不気味な水平線」 / 「蒼と呪文」 / 「2020/(のの/ようこ)」 /
「メニューをお伺い」 / 「トロイ」 / 「背中」 /
第6ラウンドへの投稿は以上の9作品でした。ありがとうございました。
次週は最終ラウンドへの投稿もお待ちしています!
第6ラウンドバトル成績速報!
20点 田村飛鳥 「遺書」
20点 にゃんしー 「トロイ」
20点 やしろあつ 「不気味な水平線」
16点 うめぜき 「蒼と呪文」
16点 モリマサ公 「2020/(のの/ようこ)」
15点 5ot6 「キャバ」
18点 ∞ 「逢い言葉」
13点 まりっこ 「メニューをお伺い」
11点 待子あかね 「背中」
審査員コメントと得点分布
背中
真っ黒なTシャツに
真っ白なマジックにぎりしめて
書き付けてやろうか
真っ黒なお前のTシャツに
真っ白な太いマジックにぎりしめて
書き付けてやろう
すきだ
すきだ
みえるかい
お前だけに みえるといいさ
トロイ
銀色の小箱をネックレスにして
首につけている人を見かける。
小箱のなかには、薬が入っている。
飲むと、即座に死んでしまう毒薬だ。
いつでも死ねるよう、お守りとして持っているらしい・・
が、その薬を飲んですぐに死ねるわけではないらしい。
毒薬自体は即効性なのだけれど、その周りにあるカプセルが
溶けるまでには数分かかるのだ。
薬品会社のデータシートには「30分以上」と記載されてある。
最低30分で、誤差としてそのあと数分かかるという意味だ。
飲んでから30分とすこし、で死に至る薬。
俗称として「トロイ」と呼ばれるようになった。
そしてトロイは、とりわけ若いひとたちの間で流行りだす。
銀色の小箱をネックレスにして、
首につけている人をいたるところで見かける。
みんな普通のひとだった。
いいひとだった。
(なんらかの要因で)薬を飲んだあとも
みなまるで行動は変わらなかった。
あるひとはドラクエをした。
きちんとセーブをした。
あるひとはマガジンを立ち読みをした。
「はじめの一歩」の板垣戦が気になった。
「世界の終わりの30分で何をするか」なんてテーマは
よくあるテーマだけれど、
みながみな、特に記載することもないくらいに平凡に過ごした。
なるべく「どうでもいいこと」を探すようにして。
30分経過すると、みなは死に場所を探した。
どのくらいの「余分な時間」が与えられているかは分からない。
最期にふさわしい、自分だけの場所がどこかは
不思議と誰にも分かった。
ゆっくりと目を閉じると、暗闇と静寂に身を任せた。
世界で一番好きなひとの胸のなかに、身を任せた。
いま、30分が経過した。
詩を書き終えないといけない。
「死を考えることは生きることを考えることと同じだ」
などと言うつもりはない。
だいたい村上春樹は、昔から嫌いだった。
今からパソコンを閉じて、
世界で一番好きなひとに言う。
告白みたいに言う。
「子供の頃に見た景色。
あれ、どこだったっけなあ?
見せたいなあ」
与えられた「余分な時間」に思うこと。
自分だけの場所で。
好きなひとの胸の中で。
僕たちは、愛するために生まれた。
メニューをお伺い
手前共が
私を眺め、指で突突いては笑っている
注いだ液体と
注がれたコップの縁に
従うだけ
ガラスの円周を只只管
歩くだけ
毎日同じ景色が映る
手からは涙が溢れるばかり
下手をしたら落とされる
下手をしたら落とされる
スプーンで掻き混ぜられる感情
白か黒か交わるか
左右してどよめいて
私の思想は
溶け切れなかった砂糖と
一緒に
沈む
ここ最近
取っ手が羨ましくて堪らない
理由は一つしか無いけど
操作されている
としかいいようがないくらいに
順調な進行具合
恥を晒す
という
脱衣が行われる
そろそろ
いい加減にして頂戴な
そろそろ
衣服を還しなさいな
口から吐けたらどんなに良い事か
逆立ちしなさい
飲み干しなさい
無理な献立永遠と
私
そろそろ
逃げてしまおうかしら
遺書
鳥の絵を見ていた
真っ赤な鳥が大空を低空飛行している絵だ
大通り沿いの小さなギャラリー
ここだけ 時間が低空飛行だった
鳥の絵を描いた人は
きっと遠い国にでも行ったのだろう
受付カウンターに座っている女の人は
どう見ても作者じゃない
わたしと目を合わせずに
「どうぞごゆっくり」と笑いかける
短気バイトで小遣い稼ぎなんだろう
ピンヒールが馬鹿馬鹿しく歪んでいた
だから
この鳥の絵を描いた人は
遠い国に行ったのだろう
煉瓦造りの家が1軒
鳥と一緒に描かれていて
羽根が屋根に当たりそうなくらいだった
しばらくすると鳥は地面に落ちてしまうのではないだろうか
いや、それとも
低空飛行を続けて海に出るのではないだろうか
いや、ひょっとしたら
窓から家に入って住人を脅かすのかも知れない
鳥の絵を描いた人は
きっと孤独だったのだろう
だから
遠い国に行ったのだろう
鳥と家だけではなかった
この絵にはもう一つ、描かれているものがあった
声だ
たすけて、?
さみしい、?
おねがい、?
声が
わたしはカウンターの彼女を少し気にしながら
鳥の羽根を撫でてみた
どうせ彼女は作者ではないのだから
この絵に指紋が付いても怒りはしないだろう
こんな殺風景な空間の中にたった一つしかない鳥の絵を
わざわざ見に来る人などいないだろうし
閉館間際の午後6時
柔らかな西日が通りをぼんやりさせ
そろそろ夕食ね、という夫婦の声が聞こえてきて
恋人達は自然に腕を組み始める
カウンターから立ち上がった彼女が
歪んだピンヒールを数回触りながら
わたしの背中を鬱陶しそうに見ている
早く帰ってコンパにでも行きたいのだろう
ここは都会の真ん中の繁華街
あと30分もすれば街のネオンが太陽を圧倒し始め
夢を失った若者達が数時間の娯楽を求めて集う
「今日が楽しかったらそれでいい」
だから
この鳥の絵を描いた人は
遠い国に行ったのだろう
わたしは赤い羽根に指を押し当てた
壁が軋む小さな音さえ聞こえる静かな場所だから
さすがに彼女もわたしに向かって
「あの」
と声を掛けた
わたしは笑って
「この絵は明日どこに行くのですか?」
と尋ねた
個展は今日が最終日
赤い鳥は今日まで何人の目を見てきたのだろう
羽根はまだ少し湿っていた
「多分作者の人が持って帰るんじゃないですかぁ」
彼女は無愛想に答える
わたしはもう一度羽根を強く押した
指紋がくっきりキャンバスに残った
この鳥の絵を描いた人は
明日も明後日もここには戻らないだろう
赤い鳥を置いて
小さな夢を置いて
遠い国に行ったのだろう
煉瓦の家の中で新しい鳥を育てるために
大空高く飛べるように
わたしは
押しつけた指紋を暫く眺めながら
日が落ちるのを肩で感じていた
鳥は
まだ低空飛行を続けていた
キャバ
氷を三つ入れます
お客は野菜です
黒服の教育
軽くセクハラ
営業
着飾ったドレスに付くサラリーの匂い、汗、タバコ、アルコール、口臭
ヤニヤニヤ二ヤ笑顔
チャーム出して入れて
グラスを交換
チャージして感情
グラスを拭って
チャージして罰
オシボリをたらす
勘定
地下の螺旋階段を爪先立ちで上がり見送る背中ごしの肩透かし
ため息一つ
一瞬の能面の顔なんて
誰にも見せられないですから
化粧室はあるのです
順位
花で埋まる
歩合
顔で決める
嫉妬
指名で決まる
きらびやかさなんかに情なんかいらないの
何度も同じ笑顔を懐から取り出してまたしまう
いつものハゲが
パンク寸前だったから
万年ヘルプに譲った
立派なマンション
乱雑な寝室
タクシーチケット
グッチ
シャネル
ルイヴィトン
着信履歴を変えて
名前も変えて
バックレ
店ごと変えて
しばらくたったら
元通りに化粧室
バックレ
白い紙を思いっきり使い果たして
流す感情
そんな毎日です
ただ通帳の数字だけが真実でした
「逢い言葉」
「こんにちは」って言えば
また会えますか?
「おかえり」って言えば
また会えますか?
「はじめまして」って言えば
めぐり逢えますか?
あなたに。
2020/(のの/ようこ)
体液の水たまりのなかでまだあたたかい動かない体を揺さぶって果てた
土を掘り埋めたあとでその上で何日も寝起きした
最初の三日は泣きそのうちの二日は雨だった
僕たちの関係はいったいなんだったのだろう
鼻血はまだとまらなかったけど
ののは女の子が好きなことに間違いは無かったし人を殺すのも好きだった
ようこは違う意味で男の子がすきだった
普通に何人もの男の子を経験しながらいつもようこは頭の中で男の子になって抱かれている
ののは自分の女々しさの中に萎えている
女の子たちはどんなふうにとろとろとろけながらいじりあったりするのか
そういうことばっかり「ばーか」
ようこはキャットフードの缶をあけてほじくりながら口にハコび咀嚼し
流星群が一分に何本もの尾を引くのを見た
確信という名の朝がくるまでののとようこは浅い夢を見た
ののは血が乾いてちぢれてゆくシャツのままで何度も目を覚ました
ののは今夢の中でまだ子供だ
父親と母親にライターのようなものであぶられていく
ののは段ボールの箱の中に何週間も閉じ込められて餓死寸前のところで目覚めた
ののは残念なことに大人たちの望むように泣いたりしなかった
フェンスが揺れているが半径2キロ以内に人の気配は無い
寝袋のジッパーをさげるとののはいつものやりかたで乳を吸いはじめる
昼間やられた打撲で体中が痛くてくぼみの部分をおさえてさすってたとこだった
殺したのは全部で7人だ
東京からきたといってたがいくらさがしてもドラッグの類いしかもってなかった
内蔵への入り口は乾いていたり濡れていたりいつもようこはばらばらで
ののはいつも息を乱さないというか果てない
今日あったことについて静かにささやいていた
ようこは血だらけのシャツが上下するので気分がよくて慰められていた
最後の一人が倒れた時の高揚した気分がよみがえる
二人のするセックスは普通じゃ考えられないほど静かでゆっくりだった
ののはようこに尽くすように動いて乳房だけは好きなようにした
ようこはいつもぼんやりとしていたけど今日みたいな日は多分いく
「マックが食いたいなー」と耳元でいいながらののがようこに深く沈んで
沈んだまま上下にかるくゆさぶるとようこは唇を強く噛んで
深く息を吐きながら「いくかも」っていった
おれたちが望んだのは強烈な生ではなかったので
生き残るたびに死者たちに悪い気がしていた
そのどっちでもよさが明日を毎日呼び寄せた
無駄エネルギーみたいなものがあたしたちには欠けていた
その面で生命力という部分が秀でていた
今日レイプされていたとき感じていたかどうかをののは聞きたがった
頭と体は別のものをみていて気持ちの面はどうでもよかった
そう答えると「じゃあ濡れてるの?」
「濡れる」
「ふうん」
蒼と呪文
短い呪文ばかり並んだ記憶がある
左頬が汚れた女の子
握られた死に絶えた雑草
窪んだ陽射しのまんなかで
僕は十二歳だった
頭に 灰色の世界
蝿がそこら中に飛ぶ
そこら中に飛ぶ視線
ただ1つの角度 死角
そこに蒼があった
確かに
灰色の世界の女の子に問いかけてみる
「君には見えるかい?」
彼女は静かに見つめている
何を?
何をだ?
僕の俯瞰じゃあ届かないもの
蒼
見えるのかい
教えてくれないか
君なら知っているはずだ
蒼を 確かめる 呪文
を
短いばかりの呪文が響いたか
左の頬が汚れたまま
女の子はじっと、蒼を見ている
やがて 僕を見つめている
不気味な水平線
うす暗やみの酷い雲
褪せた紫の大陸
農村地を走る若い自転車
城へ、城へ
うす暗やみの酷い雲が立ちこめた
生きる術もない
だからそれが其処のルールさ
生きる術もない
古城のようなアンティークでもない
雨音がする
彼方のほうで
巨人の足音
城へ、城へ
すべてが2割増しに傾いて
平面に接近する夢を見た
其処にも若い自転車は登場する
あれは原風景としての…
違う、妄執だ!
閉塞感にあきれ果て
こんなに歩いて来たじゃない
若い自転車に乗っていたのは
若いというよりはまだ幼い
大人の腰にも満たない
無邪気な少年でした
出来損ないのバカ息子
そんなものであれば良いな
農村地を走り回る少年は
孤独が血液のポンプに溢れていたのです
見せびらかしたいな
僕の、大きな心の中
隅から隅まで
汚れちまう前にさ
少年は絵を描きました
何をイメージして描いたのか
少年は想い出せませんでしたが
見たはずもない中世のヨーロッパのお城
家族は驚きました
少年は鼻をすすりました
絵を描く以前に
少年は慢性鼻炎でした
出来損ないの
夕暮れの空
勘違いした
悪い蜻蛉たち
歴史、歪み…
それらが城へ向かわせるのか
城へ、城へ
いつしか少年の血液
孤独のどくどくしい赤い
血には城が混入し始めました
休日の何気ないフットボール
ひとりの壁蹴りをするさなか
二階のベランダから
城への招待状が届きました
少年は驚き
誰にも言いませんでした
城へ、城へ
雨音が聴こえるよ
蟻さんたちスウィングしてら
大鋸屑のビート
まき散らす
擦り減らす
返り咲き
真夜中のビート
積もる、積もる
意識の頭上で
安い鶏が鳴く
風が楠の梢を揺らし
まるっきり嘯く
夜明け
夜明けだよ!
誰が見ているの
そうさ!
此処は夜明けの真ん中だあよ!
それぞれの詩の筆者に著作権は帰属します。
投稿詩 on PQs! 第6週