投稿詩 on PQs! - 第5ラウンド-
6月21日開始〜6月28日零時〆切です。(投稿順・タイトルをクリック!)
「水際」 /「蕩ふ心に匂ふ髪」 / 「アンダーワルツ」 / 「レター/ミクシーより」 /
「たるみ」 / 「土人形」 / 「さがすよ」 / 「はちみつぶた」「Message from Skymail」 / 「fallen」 / 「だいすき」 / 「ロンダの青い空」
第5ラウンドへの投稿は以上の12作品でした。ありがとうございました。
第6週への投稿もお待ちしています!
第5ラウンドバトル成績速報!
29点 にゃんしー 「Message from Skymail」
27点 蛾兆ボルカ 「はちみつぶた」
23点 モリマサ公 「レター/ミクシーより」
21点 うめぜき 「ロンダの青い空」
21点 待子あかね 「だいすき」
21点 やや 「fallen」
18点 まりっこ 「蕩ふ心に匂ふ髪」
17点 キャベツかじり節 「水際」
17点 翠蓮ツバサ 「アンダーワルツ」
17点 田村飛鳥 「たるみ」
17点 ∞ 「さがすよ」
14点 禮 「土人形」
審査員コメントと得点分布
ロンダの青い空
ロンダの住む赤茶けた家は
アダレの街外れの丘の上にある
朝方、ロンダの澄んだ歌声が聞こえてくるのを
街の人は微笑みながら聞いた
※
アダレの街に徐々にネオンがともる頃になれば
メレンゲ婆さんの喪に皆が服し始めるのだ
空に浮く鉱山で、メレンゲ婆さんは人身御供となった
一度枯れた鉱山は、鉱物が取れるようになったのだった
しかし、そうなってからロンダはいつも家では1人だった
丘の上の赤茶けた石の家で
空がとても近くに見える屋根の上で
ロンダは1人ただ歌を歌った
※
ロンダはいつも同じ夢を見る
泣きながら空を駆け抜ける夢だ
ロンダの涙が
空気中で雪に変わりアダレの街に積もる
石畳の路で黒い警察官の手に落ち
パン屋の赤い屋根は少しずつ白く染まっていく
路上に停車している青い古びたクラシックカーにも
その傍、レコードの聞こえる窓辺から
子供たちが空を覗き込んでいるのだった
その夢では
ロンダは走り続け、いつか星座になるのだった
ロンダは星々を飛び石のようにして
ピョンピョンと跳ね
そのたびに星は崩れ
流星群のように世界中に散らばっていく
※
ロンダは泣きながら起きる
いつものことだ
さみしくて さみしくて
ロンダは屋根に上り、エントツに腰を掛け
歌を歌う
アダレの街に陽がのぼる
石畳の路が明るく照らされていく
そしていつものようにロンダの歌が聞こえてくる
朝8時
空を浮く鉱山では
多くの男たちとわずかな女たちが家族の為に今日も働いている
取り巻く飛行艇
やわらかな空
ロンダの歌声は彼らの耳をも潜り
大人たちは微笑みながら山を掘る
そしてロンダはそのことを知らない
そのことを知らないが
メレンゲ婆さんに聞こえるようにと精一杯 歌った
それは
まるで賛美歌のように 青い空に響いた
だいすき
右手に真っ黒い受話器を握り締め
左手に真っ赤な携帯電話を抱きしめる
おまえの声は どちらから聞こえてくる
俺の声は どちらへと放たれているかい
真っ黒い太いお前の声
低い低い 男みたいな声
いますぐあいたいよ
俺がお前にいったのか
お前が俺にいったのか
わからなくなるさ
受話器を静かに置いたとき
真っ赤な携帯電話がしゃべらなくなった
俺は 夜空に向かって嘘を見せびらかす
棘を見せびらかす
だいすき
fallen
とん とん とん とん
まっすぐに伸びた階段を降りる
円柱状に吹き抜けている建物には
錆びたコンクリートが沈黙し
緑の苔が生えてる
ときどき誰かが追い越していく
みんな半透明で 駆け足
笑い声がこだまする
とん とん とん とん
コバルトブルーの湖に階段は降りている
足元はひんやり心地よい
私は少し望んでいる
階段はどこまでも続いていく
とん とん とん とん
湖面に足がついた
とろみを持った水が
足首を優しく食む
なめらかで浮力がない
私は待ちきれず階段を降りていく
とん とん とん とん
「あの日のことはどうしても思い出せない。
肩を掴まれたとこまでは覚えているのに」
「記憶は消える事はないんだと聞いたわ。
沈んで、しまうのらしいの」
水面から離れてしばらくしたら
肌の色が変わるのが分かった
私は丸いボールになって
尚も変わりなく降りていく
今はとても満たされた気持ちで
無くなった顔が最後に微笑んだ
とん
とん
とん
とん
と
Message from Skymail
『生きてる?』
昔ちょこっとメル友やってた友達?から
メールが来て、文面がこんなんだった。
その子からのメールのタイトルは当時
メッセージフロムスカイメールとかだったので
相当前のことだと思う。
その子と知り合ったのは文化祭のライブで、
俺の弦が切れてその子のをもらったのがきっかけで、
その子のことが、好きで、
とかはどうでもいい。
「うるせえ今はジェーフォンじゃなくてソフトバンクなんだよ」
と返すと、その子からは
『私は死んでる』
とメールが返ってきた。
もうずいぶんと連絡取ってなかったんだ。
「何があっても不思議ではない」
『阪神タイガースが優勝する以外は?』
「阪神はもう優勝した。昔と何もかもが同じだと思わないでほしい」
『私のこと今でも好き?』
ケータイから、
設定している相対性理論の「LOVEずっきゅん」じゃなくて
ブランキーの「赤いタンバリン」が流れた。
当時J-Phoneのケータイに設定していたその着メロは、
その子が打ち込みで作ってくれた音だった。
「俺のことは、当時好きでしたか?」
メールが来なくなった。
メル友をやめることになったのも、こんな感じだった。
だんだんメールが返ってくることが少なくなり、
最後に送ったメールが、ちょうどこんな気持ち確認のメールだった。
その子が俺のことを好きだったはずなんかなかった。
メールはいつも俺のほうからしてて、
その子からしてくれたことはたったの一度もなかったし。
けど、「赤いタンバリン」を作ってくれたから。
Oh 愛という言葉に火をつけて燃え上がらす
いくらか未来が好きになる
Oh I want you baby,ひとは
愛し合うために生きてるって噂、本当かも
しれないぜ、赤いタンバリン
単音で、ところどころ外れているメロディが流れた。
ケータイを開くと、一言だけこう書いてあった。
『〓』
あるときその子は言った。
赤いタンバリンは、究極のラブソングなんだって。
歌のなかでは、そんなに美人じゃない女の子が
赤いタンバリンを打ち鳴らすんだって。
赤いタンバリンというのは、心臓のことをさしてるんだって。
もうメールは返せずに、
アパートの窓から遠くの空を見上げた。
ちょうど真っ赤な夕陽が山際に沈むところだった。
会ったこともない孫正義とか浅井健一のことを思ってコーヒーをすすった。
会ったことのある、女の子のことは思わなかった。
そのままで、好きという気持ちの期限について考えた。
それすらも、「何があっても不思議ではない」のだろうか?
つけっぱなしのTVでは横浜ベイスターズがボロ負けしてて
ここだけは当分優勝しそうにないので、それにすこし安心をした。
変わることもあるだろう。
生きてるんだから。
LOVE,LOVE,LOVEずっきゅん、と歌いながら
携帯を置いて買い物に出た。
すっかり暗くなった空を、送られなかったパケットが落ちていった。
はちみつぶた
【ようちえんは春休みで、お父さんはずる休みである】
夕日の射す桜の公園を
手をつないで歩きながら
<今夜は何が食べたいですか?>
と、僕は四歳の息子に質問する
<はちみつぶたがたべたいです>
と、息子は答える。
<豚肉を煮て蜂蜜を、トリーリ、
トリーリって入れた、アレです>
なるほどね、
と、私が言うと、息子は続ける
<前菜は、花豆のサラダがいいです
花の模様がついた、クレージービーンと
水菜をリンゴ酢と岩塩で和えたやつです
ご飯は炊き立てのものを
冷ましてください
デザートは
摘みたてのブルーベリーを乗せた
ホットケーキがいいと思います
全部食べたあと、
ロウソクが残っていたら
絵本を読んで下さい>
「それが私の幸福です」
って意味の事を
カタコトで
なるほどね。
と、私は言う
突然、友達を見つけて、
息子は駆け出していき、
私は私の孤独の中に残される
桜の降りそそぐ公園で
噴水の周りを
両手を突き上げて
子供たちが駆け回っている
桜の花をつかもうとして
そして私は見たのだった
はちみつでできた
透明のぶたを
子供たちが
歓声を上げながら
追いかけていくのを
さがすよ
あの丘越えたら
きっと会えるはず
あの山越えたら
きっと会えるはず
子猫探すよ
鳴いて泣いて鳴いて母猫
あの川越えたら
きっと会えるはず
あの海越えたら
きっと会えるはず
子猫消えたら
泣いて鳴いて泣いて母猫
どこまでも探すよ
会えるまで探すよ
あの先越えたら
きっと会えるはず
あの線越えたら
きっと会えるはず
だめだよ母猫
そこは違うよ
生死の境まで
会いに行っては いけない
土人形
亀裂だらけの顔
硬く冷たい躯
涙なんて知らない
孤独な人形
形作られてゆく
手触りは、
誰のものなのか
自分のものなのか
それさえ知らずに
朝と昼と夜を
何度も迎えて
朝と昼と夜を
何度も見送った
ある日、
少女がそばに来て
こっそりと囁いた
『アナタは誰なの?』
何も知らない人形
孤独でカワイソウな人形は
頬に伝うモノの名前を知らない
それが躯を溶かして
白い肌が見え始めても
カワイソウな人形は、まだ何も知らない。
たるみ
楽して良い思いに浸りたいというのは
安い器しか磨けないのだろう
乾いて割れるのも考古学の世界だと
評価されると勘違いしている
カーテンを揺らす乾いた夕風
盛り上がった洗濯物の山を遠くから見て
すぐ、瞼をたたむ
ご飯を食べたら眠くなったの
しかもこんなに天気が良いでしょ?
三日仕事して
一日乾涸びて
二日戯れる
残りの一日は
手こずってた案件が上手くいったと話す
彼の汗ばんだ頬にキスをする
夕食は焼き魚と里芋の煮物
サラダには胡麻ドレッシングを
ビールが無いので白ワインを
今日は残りの一日でした
仕事も用事も無かったのに
乾涸びていないでしょ?
楽して良い思いに浸りたいというのは
誰もが持つごく普通の願望であり
普通を得る為に理解しがたい嘘を吐いている
場合もある
特価品で買った茶碗を割った時に
出来た傷を見つけた彼がそこを舐めた
上塗りされる今日の歴史に安堵した
安物の器もたまには役に立つじゃないか
「レター/ミクシーより」
正直今日の日はえぐれるような1日だった
いろんな意味で
あたしはもっと強くなっていかねばならない
昨日よりももっとぐるぐるめまいがした
あたしはもっと強くならなければならない
帰宅すると手紙が来ていた
夫からの手紙がきていた
休日をはさんだので遅れたのだ
もう見切りをつけていたところだったので驚いた
率直でいい文章だった
あたしは返信しなければならない
家族というのがどんなにばらばらになっても
どこかで出会うようにできてるのは何となく知ってる
それでいいのだとおもう
「この間はわざわざ面会に来てくれてありがとうございます。
たった10分間でしたが政子の姿が見れてよかったです。
久しぶりに見る政子はやっぱり元気のない様子だったので少し悲しくなりました。
俺は政子の目にどのようにうつっていたのかなあ。
やっぱり今の俺は政子を不安にさせる事しかないのではないかと考えてしまいます。以前のような二人にはもう戻れないのだなあと感じました。
ひかの事を考えると家族をこわしてはいけないと強くおもうのですが、正直、久しぶりに会えた政子の口から「別れたい」と告げられるともうダメなのかもしれないなあと思ってしまいます。
政子の幸せを考えると別れた方が良いのかもしれない、俺は政子にとって「重荷」でしかないのかもしれないと考えてしまいます。
今、政子を安心させてくれる人は誰ですか?
俺は政子が安心していてくれる事を心から願っています。
大切な大切な光輪を俺の代わりに抱きしめてください。
今の気持ちです。 また、
2008、9、21、由貴より」
正直
しょせんはシャブ中なので
どんなにしらふでも信用はしません特に身内は。
身内以外はもともと信用するとかしないとかよくわかりません。
このじぶんという現象が裏切り続ける事だけ。
真実はそこにあるのでずれまくってる。
てゆーかもうすでになにも信じてなんかいないな。
妹であろうがお父さんであろうが
特にいろんな意味で完全に信用しない。
これがあたしのスタンス。
死にたいやつは死ね。
とピーズのとも君が云っていた。
死にたいやつは。
あたしは当分死なないという気持ちで1秒を数えてる。
死ぬかもしれないけど
当分死なないつもりで一分を乗り越える。
死にそうになりながら
当分死なないんだろうなとおもいながら明日をむかえようとしてる。
当分死なない。
泣く余裕すらも無い。
今泣いとける奴らは泣いておけ。
今泣いといても許される奴らは泣け。
いくらでもさいごまでちゃんと泣け。
アンダーワルツ
アンダーワルツ
キスして並べ
まわるるまわる
レコーダーの再演
手をのべて
リズムを刻む
くりいむくりいむくりいみい
少女は砂糖菓子のように
あまくあまく
理想を述べたのは、
僕か君か誰か
アンダーワルツ
酔い痴れたグラス
溺れる
あまいあまい曲目
アレグロ ラルゴ モデラート
細やかに情熱を
木苺のデザート
烏玉にキスを落して
まわる、まわる
プレスト アダジオ カンタービレ
昇る、昇る
とけて、とけて、
燃え上がる矮躯
ウォッカを傾けて
ぼやけた輪郭に、鮮烈なノイズで
焦がして
はら、はら
はら、はら
はら、はら、はら、
アンダーワルツ
玉藻浮かぶ水槽
熱を掬って
優しさの旋律が、
夢へと、誘う
おやすみ
良い夢を
蕩ふ心に匂ふ髪
水際
先刻到着したこの境界線
何処にも無かった到達点への最短通路
飛沫が頬を打ちつける顛末を
どの状況が祝福してくれようか
熱帯夜に魘されて眠れない翌朝に
我を取り巻く細胞は少し変形していた
肉の細道から濁流が流れる
黄色く爛れて離れていく
昔逢瀬した撫子の髪がしなやかだったかな
恋の煩い方を忘却させながら
冷えた砂浜をゆるりと歩く
波は、次に遭う時は違う形をするだろうか
それぞれの詩の筆者に著作権は帰属します。
投稿詩 on PQs! 第5週