投稿詩 on PQs! - 第4ラウンド-
6月14日開始〜6月21日零時〆切です。(投稿順・タイトルをクリック!)
「ビューティフル ライフ」 / 「無題」 / 「空想の天国で死す」 / 「オルゴール」 /
「蚕」 / 「星降る夜」 / 「個人的発見」 /「ありがと」 /
「テクストをパラシュートにして」 /「たくさんどほり」 / 「停止」 /
第4ラウンドへの投稿は以上の17作品でした。ありがとうございました。
第4ラウンドバトル成績速報!
25点 蛾兆ボルカ 「個人的発見」
24点 5or6 「人妻」
21点 eugolaid 「テクストをパラシュートにして」
20点 うめぜき 「星降る夜」
19点 qrs 「蚕」
18点 田村飛鳥 「ビューティフル ライフ」
17点 やや 「停止」
17点 まりっこ 「たくさんどほり」
16点 アリア 「空想の天国で死す」
15点 葉桜彰 「歴史」
13点 待子あかね 「オルゴール」
13点 泡沫零 「変化」
12点 にゃんしー 「ありがと」
12点 芳養 「無題」
10点 空音 「フランス革命」
10点 翠蓮ツバサ 「quactet」
審査員コメントと得点分布
停止
小石が湖面を揺らすから
口を開くのを止めました
広がる波紋を見たことは?
とても静かで 深く 沈んでいきました
小鳥が姿を表したので
目を閉じるのを止めました
響いた羽音を聞いたことは?
透明に強く 遠く 流れていきました
木陰がキラキラ光るので
深く息を吸い込みました
くすんだ身体に広がる緑
閉まらぬ瞳に穴が開き
空に向かって蔓が伸び
朝顔がひとつ芽吹きました
そうして
天がこの身に流れ込み
キレイに世界を飲み込んで
ようやく咲けると思いました
たくさんどほり
敗れたノートの
切れ端に
集められた人々は
監禁されて悶えてる
黄色くなって苦しそう
硝子の破片に立たされる
節目の時が間近に迫る
貴方が呟く
御免なさい
と
左様なら。
もう随分と時が過ぎたようで
指でそっとなぞれば
塊が
あちら
こちら
動き回ります
焦がれても
痛くても
泣きやしません
苦い塩水を味わうだけですもの
解放しましょう
何もかも
召し上がりなさい
喉から吐き出す想いを
私
自身を
左様ならなんて云わないで
残さず
平らげなさい
テクストをパラシュートにして
蟹を探しまわった足の裏の対角線の陰りが火照りをだまし
肺臓を掻き乱す声の描線が、重からず遠からず消えんと枝垂れる
朝日とともに白爪が伸びたことすら気づかず、僕は再び蟹を探しまわった
セックスを終えて灰だらけのシーツの皺に、一匹目が居た
それはとても厚い唇の蟹だった
電池を入れると途端に動かなくなる時計の中に、二匹目が居た
それは白い顎髭を生やした蟹だった
見上げすぎたせいで小さな穴の穿たれた天井裏に、三匹目が居た
それは形を何度も変える落ち着きのない蟹だった
どんな愛撫にも「相対こそ絶対」という顔をした彼女のへその緒の先端に、栗と蜂と臼が居た
座敷を失った栗と蜂は、小さな小さなおしゃべりを始めた
臼は僕を一瞥してから、いつもの仕事に戻っていった
背中の柿を取れずに嘆く土色と苔色の混じり気が、最後の四匹目を踏みつぶして居た
生きた三匹は目盛を刻んだビーカーに還し、四匹目だった死骸は便所の流水に放り込む
衣装も纏わずシャワーを浴び始めた彼女に蟹が揃ったことを告げた僕は、急ぎベランダの向こうに飛び込んだ
「し」と「し」のみで編まれた32分冊のテクストをパラシュートにして
ありがと
個人的発見
女の子の靴下とパンティの間には
様々な正の相関関係が認められる。
この法則を、
「チバの第一法則と名づける。」
と言って、チバ君は、ニヤニヤ笑った。
構内の片隅、昼下がりのユニオンカフェで。
例えば、
「キャラクターもののポイントが入っている靴下を
はいている子は、キャラ系のパンティを穿いている
確率が高い。」
のであります、とチバ君は言って、ニヤニヤしながら
アイスコーヒーに口をつける。
ふむふむ。それは君、例えば、
「履いている靴下の長さの二乗は、
そのとき着けているパンティの
サイド丈の長さに比例する。」
といったことだね。
と言って、僕も、ニヤニヤ笑う。
日に焼けた長い脚を ピンクのスニーカーに
突っ込んだ白人の娘が、自転車で通り過ぎる。
靴下の丈は短くて、踝を隠せない。
「ヒモかな?」と僕が言うと、
ヒモだね、とチバ君が言って、
また、ひとしきりニヤニヤ笑う。
けだるい徹夜明け。昼下がりのカフェで。
話しながら、自然僕らの視線は、
女の子たちの足元を追っていた。
あの日チバ君は、
惨めに失敗して撤退する僕に、
慰めの言葉を贈らなかった。
彼のプレゼントはただ一つ、
「第一法則」
そんなわけで、
僕らの横を一組の脚が通り過ぎようとした時、
僕らはつい、
「Ooh!」
と歓声をあげてしまったのさ。
サンダルに突っ込まれた
綺麗な素足。
靴下は、なし!
膝から上を包む
ありふれたスカート
地味なTシャツの上には
当惑した君の顔があった。
そんな風にして僕は
君を
発見した。
1995年、夏の日の個人的発見。
星降る夜
マモルの呼吸は光る
学校のうさぎが死んだ日
マモルは自分の呼吸が時々
光の礫(つぶて)になるのを知った
マモルは決して泣かない子だった
おかあさんが居なくなった時
マモルは言葉を胸に溜めていた
けれども
呼吸は光っていた
ことを父は知っていた
が
黙って酒を飲むしかなかった
ある日
海岸沿いの防波堤に腰掛け
マモルは誰にも見えないように
うずくまり
そっと息を吐いた
まるで咽び泣くように
呼吸は、光った
マモルはいつも空を見上げた
空には
風化してしまったつぶてと
物語が渦を蒔いて
マモルは
屋根の上で
星を数えている
ことを父は知っている
そして
黙って酒を飲んで
空を思う
マモルは静かに
空を見上げて
息を吐いた
まるで
星の降る夜だと
小さな体は
やさしくふるえる
蚕
正面よりも横顔の方が綺麗なひとの脇腹が
かすかに微笑んでいるようにみえたので
えくぼをさがして こっそり触った
こんなときのお腹は やわらかい方が良い
わたしも ゆっくりと弛緩した
オルゴール
遠い夢からのおくりもの
まちがいだったなんてことないわ
あなただけが知っているエピソード
毎月一日には このオルゴールを鳴らす
遠い夢からのおくりもの
どんなに遠いところかなんて
わからない
確かに受け取ったオルゴール
囀りはどこへ届く
囁きはどこへ落ちる
まちは今日もささやかに
おくりものを届けてくれたのは
きっと あなたね 今日も
ささやかに灯りを集めているかしら
空想の天国で死す
ほんの少しまえ
私は花にうもれて死にました
大好きな薔薇にうもれて死にました
白薔薇は血で紅くなりました
やがて夜がきて
紅薔薇は闇で黒く染まると
空があかるくなりはじめるころ
黒薔薇は光で白くかわるのです
ほんの少しまえ
私は花にうもれて死にました
つい最近
私は海におちて死にました
大好きな異国の海におちて死にました
スカイブルー
エメラルドグリーン
アクアマリン
海は綺麗なごみ匣ですから
美しくきえるのにはぴったりなのです
つい最近
私は海におちて死にました
解消
ふつうの日々
何事もなく送っているその陰
またいつもの暗く厭わしい感情が渦をまく
ピーターパンがのぼりのエスカレーターを必死に逆走
硝子の部屋がだんだん息苦しくなってきた
抱える劣等感にたえられない
大きな苦痛と
逃避
今度は何処で死にましょう
無題
緊張が走る
小さな巨人とも言える
我が敵(かたき)は
鳥のように飛び
蜂のように刺す
毎夜の死闘 明ける夜
僅かな睡眠さえ奪ってゆく
幾年もの睨み合い
スパイの如く
いつの間にか傍にくる
煩わしいこと甚だしく
私は味方の手を借りる
こやつも同じく小さな巨人
あゝなんとも心強い
スイッチが入れば瞬く間
長い槍で突くように
にっくき敵をうち落とす
今夜の戦はおさまりそうだ
ほうやれやれ
そなたは本当に良き味方
異国の名をもつ
ノーマット
ビューティフル ライフ
雨上がりの空
グレーのグラデーション
一秒が長い
空のまばたき
きみの腕を雲の群れの中に探した
きみの声を鳥の群れの中に探した
かなわない、とか
ゆるさない、とか
行方を遮るものがこんなにも美しく見えるなんて
名前を残せない
手紙を貰えない
きみの知らないところで
何度涙を流してもそれらは
きれいともきたないとも言えない
悲しい
迷子とも浮浪とも言えない
寂しい
切ないとも苦しいとも言えない
虚しい
単純で難しい
これらに意味は為さない
そんなこと誰が決めたの
何よりも美しい引き様を教えて
また雨が降ってきた
暗闇の群れに隠れたきみを
僕は探す気にどうしてもなりたい
フランス革命
その眼差しは何を目指し
その眼差しは何処を目指すのか
腕にもったその旗と
帽子に耀く七色の羽が
醜い黒い空を変えようと
美しい青い空へ変えようと
叫ぶのは自由 夢 権利
神のもとに生まれし
すべてのヒトは
同じ命の重さを持っているのだと
戦えと歌う
正義の名のもとに
矜持を胸に抱き
自分たちの世界は
ひとつへと結ばれると信じている
そのまなざしが向かうのは
巻き戻せない現実を変えるために
世界に巻きついた暗雲を切り裂く
血の革命 血の行進
「集え、人々の願いを叶えるために!」
無題
ロンダの住む赤茶けた家は
アダレの街外れの丘の上にある
朝方、ロンダの澄んだ歌声が聞こえてくるのを
街の人は微笑みながら聞いた
※
アダレの街に徐々にネオンがともる頃になれば
メレンゲ婆さんの喪に皆が服し始めるのだ
空に浮く鉱山で、メレンゲ婆さんは人身御供となった
一度枯れた鉱山は、鉱物が取れるようになったのだった
しかし、そうなってからロンダはいつも家では1人だった
丘の上の赤茶けた石の家で
空がとても近くに見える屋根の上で
ロンダは1人ただ歌を歌った
※
ロンダはいつも同じ夢を見る
泣きながら空を駆け抜ける夢だ
ロンダの涙が
空気中で雪に変わりアダレの街に積もる
石畳の路で黒い警察官の手に落ち
パン屋の赤い屋根は少しずつ白く染まっていく
路上に停車している青い古びたクラシックカーにも
その傍、レコードの聞こえる窓辺から
子供たちが空を覗き込んでいるのだった
その夢では
ロンダは走り続け、いつか星座になるのだった
ロンダは星々を飛び石のようにして
ピョンピョンと跳ね
そのたびに星は崩れ
流星群のように世界中に散らばっていく
※
ロンダは泣きながら起きる
いつものことだ
さみしくて さみしくて
ロンダは屋根に上り、エントツに腰を掛け
歌を歌う
アダレの街に陽がのぼる
石畳の路が明るく照らされていく
そしていつものようにロンダの歌が聞こえてくる
朝8時
空を浮く鉱山では
多くの男たちとわずかな女たちが家族の為に今日も働いている
取り巻く飛行艇
やわらかな空
ロンダの歌声は彼らの耳をも潜り
大人たちは微笑みながら山を掘る
そしてロンダはそのことを知らない
そのことを知らないが
メレンゲ婆さんに聞こえるようにと精一杯 歌った
それは
まるで賛美歌のように 青い空に響いた
quactet
一つつくれば花が散り 二つ作ればモノが消え
三つ造れば人が死に 四つ創れば闇の訪れ
奏でよ 滅びの四重奏(quartet)
業火のごとき緋色のボレロ(bolero)
甘美な音色の夜想曲(nocturne)
総てを葬る鎮魂歌(Requiem)
終曲(finale)は死に溢れ 愚かしき者の山
積み上げられて朽ちて逝く
無音の旋律(melody.)流れゆく
焼け爛れた廃屋の 床板の隙間に四つだけ
白き花が咲いている
絶望しか無い世界で
彼女は悲しみ 唄を紡ぐ
涙の調和(harmony)は悲しくて
世界は蒼色に染まる
灰色の大地は二度と その息吹きを現す事無く
醜き争いは生まれて また大地は蒼く染まる
彼女は四重奏を奏でる
悲しみと慈愛の心で 希望が生まれるその日まで
唄い続ける
絶望しか無い 此の世界で
人妻
卑猥な人妻の性には驚かされます
そういいながら男は鼻毛を抜いた
スーパーのレシートをズボンのポケットから取り出し
綺麗に三角折りにしてテーブルに並べる
ファミレスのテーブルに
私はこの男に捕まりここに来たのです
万引きした処をこの男に見つけられまして
いやらしく万引きした物を立て替えたと言わんばかりに
スーパーのレシートをズボンのポケットから取り出し
綺麗に三角折りにしてテーブルに並べました
ファミレスのテーブルに
卑猥な人妻の性には驚かされます
そういいながら
男は鼻毛を抜きました
えぇ、そうです
私がコーヒーを置こうとした時に
注文した男はスーパーのレシートをズボンのポケットから取り出し
綺麗に三角折りにしてテーブルに並べました
ファミレスのテーブルに
卑猥な人妻の性には驚かされます
そういいながら
男は鼻毛を抜いてました
そう、私がちょうど会計を済まそうと通路を歩いていた時です
席に座っている男はスーパーのレシートをズボンのポケットから取り出し
綺麗に三角折りにしてテーブルに並べていました
ファミレスのテーブルに
卑猥な人妻の性には驚かされます
連れの女性にそういいながら
男は鼻毛を抜いていました
はい、私が子供をトイレに連れていこうと立ち上がった時です
向かいの男はスーパーのレシートをズボンのポケットから取り出し
綺麗に三角折りにしてテーブルに並べてました
ファミレスのテーブルに
卑猥な人妻の性には驚かされます
横柄な態度でそういいながら
男は鼻毛を抜いてました
つーか、私が彼氏に別れ話を持ちかけた時にぃ
横の席の男がスーパーのレシートをズボンのポケットから取り出し
てテーブルに並べていたのぉ、そうそう、三角折りにしてぇ
ファミレスのテーブルに
卑猥な人妻の性には驚かされます
女性の方にキモイ目をしながらそういってぇ
男は鼻毛を抜いたのぉ
つまりこういう事だな
卑猥な人妻の性には驚かされます
そういいながらお前は鼻毛を抜いた
スーパーのレシートをズボンのポケットから取り出し
綺麗に三角折りにしてテーブルに並べた
コーヒーを置きやすくな
そして、いやらしく万引きした物を立て替えてやったと言わんばかりに
横柄な態度で
キモイ目をして
奥さんを見つめたわけだ
ちがうか
鼻毛を抜くな!鼻毛を
まったく
おい、連れてけ
恐喝およびわいせつ行為で逮捕だ
だから
鼻毛を抜くな!鼻毛を
まったく
変化
空を見た
雲が浮かんでいた
風にのって
動いていた
空を見た
雲ひとつ無かった
風が吹いていたけれど
空は少しも変わらない
あれ
あれれ
なんだろ
風が吹いている
空は変化しない
事が起こっているのに
何も起こっていないみたい
青空は綺麗だと
誰かが言ったわ
雲ひとつ無い空
一番綺麗だと
変化が無いのは
素敵な事だと
聞いた事がある
本当かしら
あれ
あれれ
なんだろ
変化が無いというのは
本当に素敵な事かしら
変わらないという事は
進んでいないという事なのに
歴史
苔むした土塀に
爪を立てて
何百年
何千年の
鎖を喰らえたなら
積み上げた石を見上げ
伝う汗の道に
沁みる傷があっただろうと
何も口にできず
ただ過ぎてゆく影や光を
見送りながら
待つ時間もあっただろうと
何代前の血から
身を削る連鎖は
始まってしまったのだろうかと
断ち切りたいと
絞り出した声は
あまりにも貧弱で
立ち上る湯気も
振るわせられやしない
剥がれた爪など
探すまでもなく
露に濡れた苔に引っ掛かり
私の身であった事など
とうに忘れている
それぞれの詩の筆者に著作権は帰属します。
投稿詩 on PQs! 第4週