第五話「姫ボール」
2011.07.25(Mon)
にゃんしーです。
チョーリッス!

夏らしさを探す企画「夏王」でございます。

基本的には、この企画は
場所を決めて、
能動的にその場所に行くという
スタンスなのですが、
期せずして、向こうから
「夏の王様」が来ることもあります。

今日は、まさにそんな日でした。

夏至を過ぎても、夏の日は未だ長く
18時でも遠くまで空を見渡すことができます。
街の景色にも赤みがかかっていますが、
まだほんのりといった具合。
暑さにつられてか気持ちも幾分高ぶっていて
尼崎の真っ直ぐな産業道路を
自転車で一気に駆け抜けていきます。

JRと道路が交差するあたり、
電車の音に合わせて、
わあ、という歓声が聞こえたのは
そんな折でした。

尼崎市記念公園のベイコム野球場は、
JRのすぐ傍にあります。
見上げると、眩しいカクテルライト。
練習試合でこの球場が使われることはありますが、
ライトが照らされるほどの試合は珍しいはず。
ましてや、この歓声。

自転車のハンドルを急速でターンさせると、
滑り込むように球場の中に入っていきました。

そこで行われているのは、日本女子プロ野球リーグの試合のようでした。
球場の前の路地には、選手の応援旗が並んでいて、
決して大きいわけではないこの球場では珍しいほどの
盛り上がりを感じます。

入場券と、ペットボトルのお茶を買って
中に入ります。
当日券は1500円でした。


球場には、ユニフォームを着た熱心そうなファンから
ちょっと寄ってみた感じのおじちゃん(僕もその一味w)まで
いろんなひとが来ています。


この時間は薄暗くも
空がよく見えていて
すごく雰囲気がいい。


選手の応援旗が並んでいます。
「職業野球」として、真剣に取り組んでいる
「本気」を感じます。


黒木弥生て、いい名前ですよね。
無我夢中、という言葉もいい。


球場の、外野に向かう扉も開いていて
外野から観戦することもできる。


芝生に寝転ぶと、
青臭い匂いがして
心地よい。
おそらく、夏はとりわけ。


外野から一望するのっていいですよね。
野球が、土と草と風の、
地球のスポーツだってことを感じる。


ライトポール際。
もってこーい、て
思う。


試合は同点で拮抗。
風は強め。


だんだんと薄暗くなってきました。
自然の変化を感じられるのが
夏のナイトゲームのいいところです。


特等席。
「戦い」がよく見える。


グラウンドキーパーも含めて
「野球」なんだと思います。


かわいいマスコットがダンス。


球筋がよく見える。
内角ぎりぎりに立っているのが、本気を感じさせる。
バックネット裏には大抵野球オタクがいて、
意外と言っては失礼か、知識が豊富な呟きに
しばしば感心・納得させられる。


ここ一番の勝負は
いつだって「夜」に訪れる。

ピンク色のグローブを
じっと見るのだった。

ワンアウト、三塁。
打席には四番。
同点。

内野陣が集まってくる。
話す内容は決まっている。

―勝負するか、逃げるか―

四番を敬遠して、
ワンアウト、一・三塁の場面を作る。
そうすることで、
ゲッツーの可能性が生まれる。

合理的な作戦のはずだった。

内野陣が散っていく。
再度、バッターに向き直る。

ため息を、2回吐く。
それから、ピンク色のグローブをじっと見る。
ボールをまさぐると、こびりついた土がほどけて
ふわり風に乗り三塁方向に流れていく。

ピンク色は、女の子の色だ。
私は、女の子だ。
とびきり、野球が大好きな。

三塁ランナーが、大きく飛び出しているように見えた。
クイックで牽制をかけると、
三塁ランナーは砂をかぶりながら、頭からベースに飛び込んだ。

バッターは、内角ぎりぎりに立っている。

ふっと息を吐き、微笑む。

私たちは、女の子だ。
とびきり、野球が大好きな。

私は大きくふりかぶると、
そのバッターの胸元をめがけて
今日一番の速球を投げ込んだ。


すっかり暗くなった球場を後にします。

いい試合、だったな。
いい野球、だったなあ。

男の子とか、女の子とか、
関係ないねんな。
本気で、野球をやってるひとがいて、
本気で、野球を好きなひとがいて、
だから、感動する。

すごい元気もらったもん。

明日からがんばろう、そう思えました。

ただ、女の子だから出来る野球って
きっとあると思うんです。

わからないけど、
球場で買ったこのボールを見てると
「いいな」て思うから、
きっとそうなんだと思います。

絶対、また見に行く!

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