第四話「夢をみる箱」
2011.07.23(Sat)
こんぬづわ。
にゃんしーです。
日々、いい感じに暑いですね。

夏らしさを探す企画「夏王」ですが、
今回は、ちょっと変わったことをしてみようかと。

みなさん、夏休みって、何してました?
何が一番、楽しみでした?

海!とか
山!とか
花火大会!とか
いろいろあると思います。

で、ぼくもそういうの、大好きでした。

けど、それにも増して楽しみだったのって、
「テレビゲーム」だったんですよ。
超インドア。笑

けど、そういう人って、意外と多いんじゃない?

クーラーのきいた部屋で、麦茶を並べて
友達と画面、にらめっこ。
で、ときどき友達と喧嘩しながら、
でも、すぐに仲直りするねんな。

あと、徹夜してゲームとかね。
夏休みにしか、できないことでした。

僕にとって、
とりわけそういうシーンを生み出したのは
「NINTENDO64」というゲーム機です。
ご存知でない方も、いらっしゃいますかね。
ずいぶん昔ですもんね。
あのゲーム機が出たのも。
生産が終了したのも。

このゲーム機を買ってもらったのが
中学2年生のとき。
それから、いろんな場面で
このゲーム機が、夢を見せてくれました。

ただ、このゲーム機、ついに動かなくなりました。
それもつい最近。
28歳に、なった頃くらいかな。
14歳からちょうど倍ですね。

今回の「夏王」は
この夢の箱の、中を確認することです。


外観はこう。
当時は本当に革新的でした。
そんで今も、色あせていないと思います。


裏はこうです。
スロットを開けるとコネクタがあって、
64DDというハードウェアをつなぐことができます。
64DD、メディアがフロッピーディスクだったんだよ!
今の任天堂にはこんな冒険、できません。
よくもわるくも。


標準のままだと高負荷なソフトが動かせないので
拡張メモリが用意されてました。
ゲーム機で拡張メモリというのは、珍しいですよね。
容量は36Mbitだったんじゃないかな。
バイトに直すと4.5MB。
今のパソコンの拡張メモリが1GB(=1024MB)くらいですから、
隔世の感があります。
(パソコンとゲーム機の違いがあるとはいえ)


NINTENDO64は、特殊ネジなので
専用ドライバーが無いと外せません。
中は決して見えないようになっている、夢の箱なのか。
ただ、筐体は樹脂なので、無理やり外せないことはない。
金ノコで樹脂を切るのは、禁忌を犯しているようで
ひどい背徳感があります。
汗がだらだら出ているのは、切るのに力が要るから、だけじゃない。


中はこうです。
銀色の板は、触った感じアルミでした。
全体を被っているのは、ノイズ対策のためでしょうね。
VCCI規格を取っていたかと思いますので。


いちばん外側のアルミは凸になっています。
これは、空冷ファンがないので
放熱を兼ねているためだと思いますが
本当に放熱するのであればもっと凸凹させて
表面積をかせぐと思いますので、
発熱自体、そんなに無いのでしょう。


裏側もばっちりアルミで覆われています。
ノイズ対策です。


ノイズ対策は本当にしっかりしていて、
基板の両サイドにしっかり
GNDのラインがあって、
上部のアルミ板で導通するようにしてあるんですよ。


各所でVIA(表と裏を貫通させる穴)が多く打ってあるのも
ノイズ対策でしょうね。


実装部品の数はそんなにない。
パソコンと比べたらずっと少なくて
インターフェイスボード程度です。
価格も初期で\25000でしたからね。
その後、値下げも行われたはず。


CPUとグラフィックエンジン、
メモリの上にヒートシンクが載っています。
熱をアルミ板に逃がしてるんですね。
ヒートシンクの上の凸凹がうまく
アルミ板に噛み合うようになっているんですが、
熱伝導シートを敷いたほうがよく熱が逃げると思うので
やはり発熱自体、あんまり無いんでしょう。


CPU、グラフィックエンジン、メモリに
「NINTENDO」て書いてあるんですよ。
専用部品って、すげえなあと。


裏面はほとんどコンデンサです。
ノイズ対策でしょうね。
CPUの裏にVIAが目立ちます。


表はそれ以外の、いろんな部品が載ってます。
任天堂特製の部品が結構ある……すごい。
丸のはじっこに黒い線が入っている部品は
電解コンデンサだと思います。
寿命部品なので、これが壊れたのかもしれません。


電圧は+12Vと+3.3Vを受けて動作します。


画像出力。
LとRは音声。
+5Vは電源。
あとはなんやろね。。


コントローラの端子。
電源で1ライン、
通信で2ラインは必要(クロックとデータ、あるいはDATA+とDATA-)
なはずだから、
GNDはFG(コネクタの外側で導通)を使っているんですかね。


基板に書かれた「1996 Nintendo」というシルクがかっこいい。
基板名は「NUS-CPU-02」です。

これが、夢の箱の中身です。

どうでしたか?

子どもの頃、誰もが
箱を持っている。

そんで、いろんなものを
箱のなかに入れる。

プラモデル、とか、
ミニカー、とか、
ポケモンカード、とか、
テスト、とか、
出せなかったラブレター、とか、

形があるものも、
形にならないものも、
全て。

大人にあると、いつか
その箱を開ける日が来る。

箱から出てくるものは
きれいなものばかり
じゃない。

未来にある「夢」は
きらきらしているけれど
過去にある「夢」を
見つけたら、どうしたらいい?

箱から出てくるのは、
そんなものばかり。
くすんでいて、くしゃくしゃで、
仕方のないくらい、リアル。

出せなかったラブレターには、
ありがとう
って書いてあった。
いちばん最後に、ありがとうって
書いてあったんだよ。

そのひととは、今でも連絡を取っているから
いつでも、ありがとう、て言うことができる。
だけど、言えない。
14年前の「ありがとう」なんか、ずっと。

だから、ずっと持っていく。
この気持ちを痛いままに、ずっと持っていく。

夢の箱からはいっぱい
夢が出てきて
その一番最後に、
「現実」が出てきた。

「現実」は
思っているよりずっと

「NINTENDO64」は、親父に買ってもらったんですよ。

中学2年生のとき、盲腸で入院してて、
そんで、手術の前の日、不安で、
うなだれてたら、夜に、

「手術が終わったら、NINTENDO64買ってやるぞ」

って。

泣いた。
買ってもらえることが嬉しかったというより、
その気持ちが、嬉しかった。

泣いて、泣いて、
だから、「ありがとう」て
言えてないんですよ。

このこと以外にもいっぱい
「ありがとう」て言わないといけないのに
言えてない、ずっと。

いつか、言いたいな、言わなきゃなあ、とか
思ってるんですけど、
面と向かうとね、男の子の意地ですよね。笑


動かなくなった「NINTENDO64」ですけど、
おそらく一番弱いACアダプターの故障だと思うんで、
+12Vと+3.3Vを入れてあげたら、
動くんじゃないかな。

子どもの頃は動かせなかったけど、
今は動かせる。

また実家に帰ったとき、
親父と遊べたらいいな。
マリオカート64、サシで。
親父、めっちゃ下手やけど!

今回、夏の王様からもらった
宝物は
「言えなかったありがとう」
でした。
まあ、いつか、ね。

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