カマタまで文学だらけ
出店者名 泉由良
タイトル ゆりとゆらvol.2
著者 泉由良 湖ゆり
価格 500円
ジャンル そのほか
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紹介文
ある冬の夜トランクのなかの朗読会で出会った、
ウオッカと文学を愛する素敵なふたりぐみ「ゆりとゆら」

ゆりちゃんとゆらちゃんがふたりでzineを作りました。

vol.2の特集は「vodkaの夜」

真夜中、或いは異国で、嗜んだ、凍てつく炎のアルコホルについて、
愛する火酒について、各々真摯にしたためました。
詩、小説、写真。

フルカラーA5

『ズブロッカ夫妻』
 N夫妻と出逢ったのは人違いが元だった。閑静な住宅街の一角にあるライブハウスで、知人だと思い声をかけたら全くの別人だったのだが、同郷の身であることがわかり意気投合して終演後に一杯飲みに行こうということになったのだ。N夫人はグレーのショートヘアが似合う小柄な女性で、彼女の夫とふたりで来店していた。「彼の生演奏を聴くのは初めてなの」と彼女は言った。「CDでしか聴いたことがなかったから、一度ほんとうの声を聴きたくて。来て良かった」そう話した彼女の眼は、初めてギターを弾いた少女のようにきらきらと輝いていた。


 それからタクシーに乗り、川沿いの繁華街にあるバーのカウンターに三人で並んで座ると、N夫妻はカナリヤ色の鮮やかな柑橘系のカクテルをご馳走してくれた。N氏はズブロッカをオン・ザ・ロックで、N夫人はストレートで飲みながら「初対面で飲みに誘ってついてきた人って、あなたが初めてよ」と笑ったので、急に恥ずかしくなり「初対面で飲みに誘われて、ついて行くのも初めてです」と答えた。
「でも、悪い人じゃない気がしたから」
「直感的なのね」N夫人が微笑んだ。
「わたしと似てるわ。そういうのって大事なことよ」