出店者名 みなもとはなえ
タイトル Letter to ME
著者 みなもとはなえ
価格 500円
ジャンル エッセイ
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紹介文
誰かの日記をこっそり読んで、私ではない誰かも、毎日を生きているのを知るのが好きです。
2014年から2015年まで、SNS「note」で書き溜めたエッセイをまとめました。
なんでもない私のなんでもない日常には、たくさんの感情と憂鬱と美しさであふれていました。

掌編小説3編・描き下ろしエッセイ3編に加え、いくともさんによる解題も収録。

 もうなんでもかんでもプラスチックだったらいい。偽物だったらいいんだ。この体以外つくりものなら。
 でも、この体だって細胞でできたつくりものだ。本物、なんて、どういう了見なんだ。
 感情が、プラスチックの箱に入っている気がする。中から取り出せたらそれはきっと綺麗なまま保存されている。でも、プラスチックの箱に入っているから、触れられない。見るだけだ。匂いも手触りもプラスチック。それはじゃあ偽物だろうか? 私にはわからない。
 なんどもなんども思考のループを繰り返す。

 誰かの心に触れたいと願うあまり、傷つけたいと考え、結局傷ついたのは自分だから、やっぱり相手に尽くしたいと思って、恐る恐る近づいても、やっぱり心には触れられない。
 みんな、プラスチックの箱に入っているのか。私には、そういうふうに見える。
 目が曇るほど、プラスチックの箱は鮮明に見えるのだ。たぶん、私がプラスチックの眼鏡をかけているからかもしれない。

 もし、神様がいるのなら、別に今更生まれを良くして欲しいとか、お金持ちになりたいとか、夭逝したいとか、有名になりたいとか、そんなことは願わないから、ただ、私のことをプラスチックの箱にしまわないでほしい。

 そして神様、あなたも、プラスチックにならないでほしい。

 生の匂いがほしい。生の手触りが欲しい。生のこころがほしい。生きている本物はいつも、わがままだ。