こちらに掲載しております内容および、
他に紹介して頂いた書籍
のうち
文学フリマ大阪で頒布されることが確認できたものについては、
「文学フリマ大阪・非公式ブックガイド」として
文学フリマ大阪当日にブース
D-02(文学フリマ大阪非公式ガイド)
より頒布させて頂きます。
書籍名
渊(ふち)
作家名
孤伏澤つたゐ
文学フリマ大阪
ブース番号
C-02(ヨモツヘグイニナ)
タグ
あらすじ
産卵をせよ右腕の刻印に僕らはいつでもふたなりの蜘蛛(かみさまごっこの跫)
朝起きて終末論が学校を覆っていたら君の勝ちだね(Rと屋上で)
餓えた雛だといつか知らされてアナタアナタと喚く地下街(湿度)
声ひそめ、いずれ共寝の日もあるか桟橋からの付文である(神代にて)
BL短歌46首収録。
Twitter 「#BL短歌」にてツイートしたものを中心にまとめています。
残部僅少のため、お取り置き優先となります。
ご希望のかたいらっしゃりましたらお声がけください
紹介文
サークル名の「ヨモツヘグイニナ」は、
南太平洋の深海に棲む巻貝に名付けられた名前で、
これは日本神話の「黄泉戸喫(ヨモツヘグイヒ)」が元となっているようです。
「黄泉戸喫」とは、「黄泉の国の食事をする」こと。
孤伏澤つたゐさんの作品は、
まさに深海を深く潜っていくような、
深い闇を感じます。
闇の中では、
人間が観測もできない出来事が日々起こっているのだと思います。
世界は人の知っているいきものばかりではない、
ということを感じさせてくれる世界観が魅力です。
「渊」は、つたゐさんがツイッターで
ハッシュタグ「#BL短歌」をつけてつぶやいた短歌46首が収められています。
「BL」とは、ボーイズラブの略で、
一言で言えば男性同士の恋愛を描いた小説や漫画などを指します。
つたゐさん、また私壬生が参加した
世界初のBL短歌を取り扱ったマガジン『共有結晶』では、
BL短歌を「57577に萌えをぶっこむこと!」と定義しています。
またこちらのマガジンで「BL」とは、男性同士に限らず、
「関係を描いており、それに対して萌えることができるもの」としています。
男にも生まれられずにぼくたちは風切り羽に傷ばかり負う(かみさまごっこの跫)
「男にも生まれられずに」というのを素直に受け取ると、
この短歌の主人公は女性と考えられます。
空を飛ぶために必要な「風切り羽に傷ばかり負う」ということは、
自由に飛べない不自由な状況を詠んでいるのかな、と思いました。
腹にサイダーの王冠押し付けて没落からの王様ごっこ
天使には聖歌隊すらいると聞く。熟れた林檎のような手術痕
男にも生まれられずにぼくたちは風切り羽に傷ばかり負う
(かみさまごっこの跫)
消えない傷、しかも他人につけられた傷がある。
特に「腹にサイダーの王冠押し付けて」が萌える。
肌を見せているのである。
しかも、腹という、普段は見せていないであろう場所を。
「押し付けて」という控えめな言葉からは、
振り払おうと思えば振り払えるのに、
そうしない二人の関係が妄想できて、萌える。
「登場する人物の性別にこだわらない」と記述しましたが、
私がつたゐさんの短歌の魅力だと感じるのは、
「人の世界」というものにもこだわらない世界観だと思います。
これについては、本を手に取ってお確かめください。
紹介者:壬生キヨムさん
書籍名
el.
作家名
Wilhelmina
文学フリマ大阪
ブース番号
B-27(冬青)
タグ
あらすじ
「天使」をテーマにしたアンソロジーです。
■白人の女性型の義体のように見えたが、それは人ではなかった。
ほっそりとした肩の後ろから、巨大な白い羽根が覗いている。
――「天使」の義体。
「ガブリエル」(犬塚暁)
■誰もいなくなったリンクに、新たに滑り出す者はいない。
ヴコールはじっと階下を見ながら、天使の姿を傷だらけの氷上に思い描いた。
「レニングラード(1988)」(あずみ)
■……あんたたちはほんとうに残酷だな。
人前に姿を現すときは、相手が最も対面を望まない人間の外見を借りてくる。
「羽」(柳川麻衣)
■ガン=カタ・スタイルで戦いアヴァター世界唯一の『魔法』を使う、
鋼鉄の羽根を持つ天使。
「ハロー、ニュー・ワールド」(穂崎円)
以上四篇を収録しています。
紹介文
”天使”と聞けば皆、どんな姿を思い浮かべるだろうか。
人ではないもの。
神の使い。
清らかで崇高な存在。
義体、フィギュアスケーター、ボーカリスト、アヴァター。
四者四様の解釈で描かれる四人の『天使』たちは、
現れる時代も背景もそれぞれ異なりながら、
その美しさ・力強さ・儚さで、
出会う人々の記憶に、
そして読み手である私たちに
焼きつくかのような色鮮やかなその存在を残していく。
『羽根を持つ者』のその軽やかさは読み手を惹きつけ、
ページをめくる手を止めさせてくれない。
そしていつしか、その軽やかさのまま音も立てずに飛び立ち、
私たちの元にはふわふわと柔らかなその羽根だけが残される。
それぞれに異なったトーンを貫きながらも、
静謐で重厚な世界が練り上げられた物語は
どこまでも奥深く、美しい。
読後にそっと込み上げる余韻はまるで、
単館上映のオムニバス映画を見終えたよう。
紹介者:高梨 來さん
書籍名
ファンタスティック・ワーキング
作家名
柏木むし子
文学フリマ大阪
ブース番号
D-02(文学フリマ大阪非公式ガイド)
タグ
あらすじ
世界を股に掛けたアルバイターが経験した不思議なを語る、
ちょっとシュールでちょっと幻想な連作短編。
・針の付いていない釣り竿を垂らして待つものとは――「蝋紙の誘惑」
・その巨大な木の葉は螺旋階段のような形をしていて――「登る阿呆」
・薬を口にすると、愛らしい猫の姿が脳裏に浮かんだ――「情報薬」
・彼女は荒野で光を拾い、僕はそれに倣う――「耀ける亡骸」
・この街の住人たちは気軽に頭を取り替える――「頭を抱えた話」
の五篇とそれらに付随するエピソードを収録。
(過去のペーパーからの再録を含みます)
紹介文
拝読して、即、発想力に脱帽しました。天才ってこういうひとのことをいうのかな……。
おかっぱ頭のイケメン記者さんが綴る、さまざまな短期の仕事のレポート。
この短期の仕事が、どれも、とてもおもしろい。まさに発想力の宝石箱!
文章も読みやすくて、すいすい読み進めることができました。
装丁も凝られていて、本の中に本(ノート)がある仕様です。この発想もすごい。
まさに「ひとに薦めたくなる御本」ですね。
まちがいなく「おもしろい本」の一冊だと思います。
紹介者:咲祈さん
書籍名
あくだま
作家名
壬生キヨム
文学フリマ大阪
ブース番号
D-02(文学フリマ大阪非公式ガイド)
タグ
あらすじ
「あくだま」とは、プロレスなどの「悪役キャラ」の「悪玉」のことです。
「あくだま」役の人間と、「ぜんだま」役のきつねの妖怪が戦ったり恋愛したりする物語です。
紹介文
「あくだま」は、BL小説です。
男の子が男の子に恋する話。
濡れ場もあるし、横恋慕とか嫉妬とか、
そういう気持ちもある。
けれど、このお話を読んで感じるのは、
同性愛や、性というものへのタブー感がないなあということです。
もちろん、良い意味で。
種を撒いたら草が生えてきたねえ、くらいの感覚で、
同性を好きになることや性的なことが描かれていて、
するする読めます。
しかもこのお話には、
そういったBL要素以外にも注目すべきことがいっぱいで、
するする読めるのですが落ち着いて考えると
気になることがいっぱいです。
受けの名前が「ペペロンチーノ」はどうなのか、とか。
狐が人に化けているのは良いとして、住民票や戸籍はどうなっているのか、とか。
なぜBLなのに妖怪が地下闘技場で戦っているのか、とか。
うつくしい顔ってどんな顔なんだ、とか。
紹介者としては、この「あくだま」は、
そういう色々なことを唯々諾々と受け入れて
最後まで読むのがおすすめです。
だって、面白いから。
他の理由がいるかね?
否、いらないだろう。(反語)
そういう物語を「エンターテインメント」というのです。
残部僅少との情報も作者の壬生キヨム氏より出ているので、
多少なりとも気になっている方は迷わずご購入を。
それでも迷っているという、慎重な方。
試し読みをご用意しました。
http://upppi.com/ug/sc/item/4089/
『【あくだま⑤】ペペロンチーノ峯田 生贄になるの巻』
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3513960
「あくだま試し読み/ペペロンチーノ峯田オークションにかけられるの巻」
表紙はこんな感じ。イケメン!攻めが狐なのでケモナー属性の方にもおすすめ。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=42092320
尚、キャラクターグッズとして
「ペペロンチーノ峯田の乳首ガードシール」も
完成したとのことです。
これは、受であるペペロンチーノ峯田さんが
プロレスマスクをして闘技場で戦うときに
乳首に星形のシールを貼っていることに由来します。
それもどうなの、
かぶれないの、
汗で剥がれないの、
と気になり始めると気になってしまうのですが、
受け入れていきましょう。
それがキヨムワールドです。
個人的には浮葉さんが好きです。報われない感じがして。
紹介者:相沢ナナコさん
書籍名
日本史C
作家名
唐橋史ほか17名のゲスト
文学フリマ大阪
ブース番号
C-01(浮草堂)
タグ
あらすじ
「誰も知らない歴史、教えます――」
中学校や高校で手にしてきた教科書には載らないような、
或いは載せられないような、
載るはずがないような<誰も知らない>日本史を
テーマにした歴史小説のアンソロジーです。
参加者は総勢18名。
舞台は弥生時代から昭和までを一挙に網羅。
知られざる日本史を題材にした珠玉の作品を掲載しました。
執筆者たちの大胆な解釈(あるいは妄想?)を思う存分、お楽しみ下さい。
紹介文
歴史小説って、
ちょっととっつきにくいというか、
堅苦しいイメージがありました。
歴史に詳しい人や好きな人じゃないと読むの難しそう、みたいな。
『日本史C』は、そういう変な壁をぽんっと乗り越えて、
歴史小説も面白い!楽しい!
って思える本です。
掲載作品には本格的な歴史小説はもちろん、
時代小説、FTやSF風味な作品もあり、
読んでいて飽きません。
誰もが知ってる歴史的事件の
意外な裏側みたいなのも興味深かったですし、
歴史には残らない普通の人々の生活が
垣間見える作品も素敵でした。
時代背景を重視するものもあれば、
意外とキャラクター重視な作品もありで、
本当に多種多彩。
どこまでが創作でどこまでが本当の歴史だったのか……
想像するのも楽しいですし、
本当の歴史について調べるきっかけにもなるしで、
歴史小説にはいろんな楽しみ方があるーー
それを教えてくれた『日本史C』は、
歴史小説の入門書みたいな感じです。
歴史小説が好きな人よりも、
むしろ苦手な人に、
最初の1冊としておすすめ。
もちろん歴史大好きって人も楽しめると思います!
紹介者:ななさん
書籍名
私はあなたに触れたいという欲求が私はあなたに触れられないという禁則から逆説的に生まれていることを知ったとき、私はあなたに生かされていると感じる。
作家名
山本清風
文学フリマ大阪
ブース番号
A-27(文学結社猫)
タグ
あらすじ
───星間の距離感をわたしたちは星座と呼び、
心の距離感をわたしたちは恋愛と呼ぶのだ。
かつて遠い昔の瞬きをわたしが星と認識するように、
認識したときにはすでになくなっているかも知れない、
そんな可能性がわたしの恋だった───
浦崎(うらがさき)市という架空の町を舞台に、
関西方言を用いて黒髪JKポニーテール処女の川原明日架(かわはらあすか)が
クソサブカルナイーブ野郎から告白されたり、女友だちのトイレに嫌々つきあったり、
カースト上位のいかついヒゲメンからSNSでグイグイ来られたりしながら、
現実から逃避するはずの物語がこれでは意味ありませんやんか、
まったく癒されないまま「わたしはあたしがわからない」を叫んだ、
ラノベに偽装する純文学。
紹介文
小説の感想として、音楽的である、という表現に出会うことがあります。
音楽的。
なんとなく分かるような気になっていましたが、
この小説を読んでわたしは初めて小説を音楽的だ! と思いました。
『私はあなたに触れたいという欲求が
私はあなたに触れられないという禁則から
逆説的に生まれているということを知ったとき、
私はあなたに生かされていると感じる』
この、ツイッターならそれだけで
文字数がいっぱいになりそうなタイトルの小説、
通称イカサレは、結論から言うと
ポップなハードコアでした。
好きな男から告白された主人公・川原明日架が
自意識をこんがらがらせ
それを断ってしまい、
色々あった末に
改めて男に告白するが
男も自意識をこんがらがらせており……
とそのあたりまでは笑って読めました。
コロコロと転がるような軽やかな一人称に
アフォリズムめいた言葉を散りばめたような
独自の文体はどこまでもポップで、
文章を読むというただ単純な喜びに
読者を浸らせてくれます。
地の文と会話文はほとんど境目なく続いており
違和を感じさせません。
気が付けばあれよあれよという間に
わたしは山本清風氏に連れていかれていたのです。
ちょっとした地獄に。
続きはweb以外で。
話を音楽に戻しましょう。
この小説のどこに音楽を感じたかと言うと、そのリズムです。
演奏は軽やか。
キャッチ―でやや癖のあるメロディ。
ときおり変拍子が入りつつも、
難解さは感じさせず、
あくまでもポップに小気味よく。
そうそう、
ヘッドフォンで聴けばさぞ気持ちよいでしょう。
ですがこの曲を聴き終えたとき、
爽快感など微塵もありませんでした。
何故でしょう。
思い返すと軽やかだった演奏は
そのリズムのみを残したまま
ディストーションギターにすり替わっており、
同じなはずのメロディは、
いえ確かに同じメロディなのですが
いつの間にか歌声でなく
エモーショナルな絶叫に変わっていたのです。
これを読んだみなさんにも是非
その口当たりの良さに騙されて読んで欲しいのです。
そう、以下の言葉にピンときたなら特に。
・自意識
・クソサブカルナイーブ野郎
・産む機械
・ピーチジョン
・承認欲求
・イムルダイ
・初音ミク
・NTR
・卒塔婆
・岡崎京子
……そうそう、書きながら気が付きましたが
これはきっとリバース・エッジの変奏。
平坦な戦場で僕らが生き延びること。
そういうことなのです。
紹介者:弍杏さん
書籍名
よるべのない物語
作家名
キダサユリ
文学フリマ大阪
ブース番号
C-04(箱庭製作所)
タグ
あらすじ
少女が最も孤独を感じるのは、そんな瞬間です。
この世界で落下し続けているのが自分だけだという実感は、
死に等しく恐ろしいものなのです。(「落下」より)
空中を落下し続ける正体不明の少女、突然身体にうろこが生えてきた少年、鶏に求婚された養鶏場の娘……
不条理な運命を生きる者たちの、奇妙でちょっと寂しい五つの物語。
心と身体のよるべなさをテーマとした、著者初の短篇集です。挿絵付き。
紹介文
グロテスク
という言葉を聞くと日本人は「気持ち悪い」であるとか、
人によっては「スプラッタ要素」を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
だけど実はこの言葉、西洋美術史という観点から見るともう少し具体的な意味がある。
それは、「人間の体と動植物の形がまじりあった装飾様式」。
本来確固たる形を持った人間の体が、端のほうから蔦や獣の手足に侵食されていく。
自分がわけのわからないものになっていく。溶けだされていく。
そんな本能的な怖れであったり、嫌悪感であったり、そういう感覚だけが強く残り、
現在に至る「気持ち悪い」という意味に転じたのではないか。
と個人的にはぼんやり思っている。
本作「よるべのない物語」は、
そういう意味での「グロテスク」な作品だと紹介させていただきたい。
これはまったく、ディスりではないですよ、キダさん。
本作品は五つの掌編から成る短編集で、キダさんによる挿絵もついている。
それぞれの物語において、「何かとまじりあうこと」が描かれている。
夜という大きくて形のないものと、トカゲや鳥、花という生き物たちと、「自分」がまじりあっていく。
外側から染み込み、内側から溶けだしていく。
この本の中では、夜空や動植物たちは決して人間の背景ではなく、限りなく対等なものとして存在している。
畏敬の念すら感じさせるその在り方は、ひとえにキダさんが持つ、自然への深い愛そのものなのだろうと思う。
ちなみにキダさん、インスタレーション*のご経験もあるという。
インスタレーションにおいて迫ってくるのは空間そのものである。
そこでは「体験」が強制化される。
そこにいるだけで、自分も作品の一部であるかのような気までしてくる。
この「よるべのない物語」も、そんな力を持っている。
私がこの本を手に取ること、ページをめくること、この手の動き、
それも含めたすべてがキダさんの表現であるように思えてくる。
この本には空間を形作る力がある。
本という形をした、立派なインスタレーション作品だ。
そして私は、読者は、この本に取り込まれていく。
外側から染み込み、内側から溶けだしていく。しずかに、まじりあっていく。
*ある特定の室内や屋外などにオブジェや装置を置いて、
作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させ、
場所や空間全体を作品として体験させる芸術。(Wikipediaより)
紹介者:キリチヒロさん
管理者:にゃんしー
著作権は各投稿者に帰属します。
質問などの連絡先:ppmhr152 at yahoo.co.jp
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