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『放火』 |
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短歌は一抹のさびしさを摘む詩型と考えていました。 『デミウルゴスと光暈』はそのような内気なものではありません。怒濤のごとく景色と感情が押しよせ、読む私を飲みこみます。ひとつひとつの歌がシャウトのよう。 共感はけふよりポルノと成り果てる まくらに?き蜜柑を飾れ 立ってゐる其の背微かに反りて嗚呼! きみを見るときいつも泣きたし どうかこの眩暈をあなたにも。 | ||||||||||
推薦者 | へそ | |||||||||
推薦ポイント | 文章・文体が好き |
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稲光のように貫かれる鋭い言葉がこの身を容赦なく突き刺す。行間から立ち上るのは、燃えさかるような熱だ。身を焦がすようなその熱さは強烈な渇きをこちらへと伝える。 強烈なまでの光と闇とのコントラストはまるで、宗教絵画を思い起こさせる。 共感はけふよりポルノと成り果てる まくらに青き蜜柑を飾れ 夜はきみ、紺きわまれるくらがりに哀しみいろの向日葵燃えよ (放火) かみさまが入れ忘れたのだ一切をうつくしいきみ泣きもしないで いつからか眼がよくなったきみのこと神さまみたいにならないでいて (白痴、或いは僕の友達) ふらここの軋みだらうか違ひますあなたが軋み沈んでゆくのだ 悲しみで蝋化したひとおびただし彼らの影でつくる鉛筆 (イヴァン) 旧漢字、仮名遣い、ひらがな。言葉のリズムと呼吸を意のままに操りながら綴られる三十一文字の短詩の中から浮かび上がるのは、「何者か」に必死にあらがうかのような狂おしいほどの魂のありようだ。 それはきっと、真魚さんが言葉の世界で潜りながら波に呑み込まれまいとあらがう「夜の海」の底から引きずりあげてきた物なのだろう。 | ||||||||||
推薦者 | 高梨 來 | |||||||||
推薦ポイント | 表現・描写が好き |