尼崎文学だらけ
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委託販売
タイトル 飲食系アンソロジー なないろ世界の食歩記
著者 アンソロジー
価格 200円
カテゴリ 大衆小説
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紹介文
食べ物・飲み物がテーマの掌編小説アンソロジー。
ファンタジーから現代コメディ、日常ミステリまで、貴方の空腹を満たす極上の物語を「いただきます!」

【うンまいジャムの、その半分】世津路 章
キーワード→ジャム・魔女・木べらでじっくり

【分かれ道はデミグラスソースを入れるか入れないか】柑橘
キーワード→幼なじみ・常に腹ぺこ系バカ男子・ツンツンおかん系男子

【砂糖衣に包まれて】いぐあな
キーワード→死と再生・蛇・ボンボン

【ネロ・バリスタ】服部匠
キーワード→エスプレッソ/ヒーローアクション

【幻獣料理のレシピ】森村直也
キーワード→ジビエ・ジャーキー・ロジカルファンタジー・アクション

【葉桜の頃、桜葉の味】堺屋皆人
キーワード→和菓子・大学生・日常ミステリ

【表紙イラスト・各扉カット・飾り枠】岡亭みゆ(火色星)

「こりゃー、事件に新展開だねえ」
 良く晴れた日の、午前十一時。革帯市(かわおびし)の繁華街にあるコーヒーショップ『イメージビーンズ』店内。
 カウンターに座る常連の老人、ショーが呟く。彼の手元にあるのは、吸いかけのたばこと、『革帯市の連続傷害事件、謎の怪物が犯人か!?』という見出しのスポーツ新聞。
 カウンターの中に居る店員、鐘洞(かねほら)くるみは、エスプレッソマシンでミルクを泡立てている最中だったが、ショーの言葉に少しだけ眉をひそめた。
「謎の怪物だってさぁカネちゃーん」
 しゃがれてはいるが愛嬌のある声音で、ショーは鐘洞の事を「カネちゃん」と愛称で呼ぶ。ミルクピッチャーをくるくると回しながら―泡を均一にさせているのだ―ショーへ微 笑み返した鐘洞は、真剣な手つきで、エスプレッソの入ったカップにミルクをゆっくりと注いでいく。
カチ、カチ、とカップの淵にミルクピッチャーがぶつかる音だけが響く中、ショーは好々爺の微笑を浮かべ眺めていた。
「――いやだわショーさん。そんなマンガか小説みたいな。っていうかそれ、スポーツ新聞じゃないですか。はい、ご注文のカプチーノです」
 ミルクを注ぎ終わった鐘洞は、言葉だけはざっくりと、しかし手元は丁寧に、出来立てのカプチーノをショーに差し出した。艶のあるフォームドミルクがカップの縁ぎりぎりまで盛られ、泡で綺麗なハート型が描かれている。
 見事なラテ・アートに、ショーの目尻が下がる。
「おっ、ありがとありがと。いつもながら美味そうだなぁ 」
 カップに口を付け、出来立てのカプチーノをすするショー。唇の上にミルクの泡を付けた無邪気な様子に、鐘洞はくすりと笑って「ショーさん、お髭にミルクが」と囁く。ショーはその言葉に、こほんと小さな咳払いをした後、照れくさそうにナプキンで泡を拭った。 
「でも、怪物だなんて非現実的だと思いますっ。大方、変なかぶりものでもしてるんですよ。全く、馬鹿馬鹿しい!」
 二週間前から、世間を騒がしている連続傷害事件。殺人まで至らないものの、軽傷から重傷まで被害は広い。しかし目撃情報が「虫のような頭をした怪物」だの「キチキチと鳴く怪物」だのあまりにも非現実的な為、捜査は難航している。

(主催作品【ネロ・バリスタ】より)


あっという間に食べ終わるのに、この上ない満足感!
 4000字ほどの掌編が6篇収録された、《食べ物・飲み物》をテーマにしたアンソロジー! 短編と侮ることなかれ、いずれもガッツリ内容は詰まっていて、なのに決して胃もたれしない絶妙な長さになっています。内容もひとつとして重なることなく、お気に入りの一作が必ず見つけられると思います。

 食べ物・飲み物というのは、それを囲みあう相手との様々な関係を映し出すものだなぁと、1冊読み終えて改めて思いました。本作に収録されているのは、いずれも読んでほっこりしたり、くすりときたり、見ていて心があたたかくなるような絆の物語。それを素敵に演出する岡亭さんのイラストも、とても味わい深いです。

 即売会イベントに出す度即行売切れ(これマジです、委託受けてたのでわたくし)の本作ですが、今回がラスト頒布とのこと! あたたかみのある装丁に、お腹をやさしく満たしてくれる実力派ぞろいの作品ばかり。この機会にぜひ!
推薦者世津路 章
推薦ポイントとにかく好き

お話が食べ歩けるアンソロジー
「食べ物・飲み物」をテーマにした6つの掌編小説アンソロジーです。

・うンまいジャムの、その半分 世津路章様

優しい文で綴られる、魔女と少女のジャム作りのお話。
上手に果物の皮を剥き、丁寧に切り刻む少女、クラリッサ。貧しい農村出身の彼女には、実はここに来るまでに辛い出来事があって…。
失敗しても大丈夫。もう一度胸を張ってみよう。そんな気にさせてくれる、優しい暖かなお話です。

・分かれ道はデミグラスソースを入れるか入れないか 柑橘様

腹ペコ系男子が、幼馴染のオカン系男子の家に、夕食をご馳走になるお話。
この腹ペコ男子、斑くんが可愛いんです。図体はデカいのに、中身は子犬のように、クンクン鼻を鳴らしそうな男の子。それを見事にあしらう空くんも可愛い。この二人がじゃれ合うと、相乗で更に可愛いです。
とにもかくにも、可愛い二人を愛でたいお話。余りの可愛さにニヤニヤ必至です。

・ネロ・バリスタ 服部匠様

ヒーローアクションをいつも見事に書き描く作者様の(良い意味で)お約束モノ・ヒーローアクション。
ツボを押さえまくった設定、何故かコーヒーに詳しくなりそうな戦闘シーンに、これでもか!! と作者様の筆が走りまくります。
まずは、読んで下さい。きっと読み終わった後、「面白かった!! 続きは!?」となること請け合いです。

・幻獣料理のレシピ 森村直也様

ちょっとすれた少年に連れて来られた、さえない(失礼)男性のモンスターハンティング。
唱える呪文はプログラム言語。ということは、この世界は?
志倉さんがひたすら痛そうで可哀想で、でもカッコイイお話。
実は作者様のブログに、「禁則小説 『闇球生まれる日常の午後−Logical Fantasy』」という志倉さんの、もう一つのお話がありますので、これを読むと、また感じ方が違ってきます。

・葉桜の頃、桜葉の味 堺屋皆人様

「運命の人」(但し数度目)に出会った青年と、それを見守る友人のお話。ひらすら彼女の作る和菓子を買うしか出来なかった淡海くんが、声を掛けた途端、彼女は…。ちょっと切ない、優しいラスト。読み終わると、餡子モノが無性に食べたくなります。

岡亭みゆ様の表紙、挿し絵も本当に素敵で、まさにいろんなお話が食べ歩けるアンソロジーです。
推薦者いぐあな
推薦ポイント物語・構成が好き

味を創造する物語集
美味しそうな食べ物と共に案内される
ちょっと切なかったりする物語。
表紙のワクワク感と
雰囲気の違う
そっと寄り添う美味しい物語達。
完食できます!
推薦者第0回試し読み会感想
推薦ポイント世界観・設定が好き

ファンタジーから現代コメディ、日常ミステリまで、貴方の空腹を満たす極上の物語を「いただきます!」
 それぞれの書き手さんの個性が現れた「食べ物・飲み物がテーマの掌編作品集」
 取り扱いメニューはお菓子から食事、飲み物とバラエティ豊か。そして舞台もファンタジー、現代、コメディ、日常ミステリと幅広く!

【うンまいジャムの、その半分】世津路 章 さん(こんぽた。) 
 人生誰しも一度は直面しそうな、進路や将来のことに関する世津路式寓話。丁寧に語られる「魔女のジャム作り」そこから見えるのは、何事も一瞬にしては作られず、さまざまな思いや試行錯誤の末に結果があるのだということのようにも思えます。
 そして出来上がったジャムのおいしそうなこと! 主人公・クラリッサと共に味わってくださいませ。

【分かれ道はデミグラスソースを入れるか入れないか】柑橘 さん 
 料理男子ですよ奥さん。しかもツンツンのおかん系男子ですよ。それに対して組み合わされる腹ペコ系おばか男子。これって定職セット並みに定番じゃないかしら。
 小気味良い文章のリズム、短い中でも楽しいコメディー。鉄板レベルの美味さ。タイトルの意味も、最後まで読めば納得の一作。

【砂糖衣に包まれて】いぐあな さん(一服亭) 
 冥界の神様・ウロボロス様と、死者となった少女のほろりと苦くて甘いファンタジー。
 いぐあなさんらしい、優しくも決して容赦しない運命のドラマだからこそ、ラストに胸締め付けられるのだと思います。
 ボンボン(砂糖菓子)とのリンクが本当に素敵な物語。

【幻獣料理のレシピ】森村直也 さん(HPJ製作工房) 
 読んで爽快感のあるアクション×独特の「術式」(プログラミング言語かしら…?)×ファンタジーな逸品。
 個人的には独特の(これ、専門外でなんとなーく分かるくらい、だからなんでしょうね)術式に中二心がくすぐられます。
 そして出来上がったもの、私も食べてみたい。

【葉桜の頃、桜葉の味】堺屋皆人 さん(S.Y.S.文学分室) 
 和菓子屋を軸にした、惚れっぽいワトスン役男子と、安楽椅子系男子の日常ミステリ。
 読みやすい文体で語られる和菓子職人の小さな謎。ちょくちょく挿入される和菓子豆知識は、まるで店先にいるような臨場感。
 ぜひラストにご注目。

【表紙イラスト・各扉カット・飾り枠】岡亭みゆ さん(火色星) 
 岡亭さんはカラーイラストと、フリーハンドで描かれる幾何学的な模様が特徴の描き手さんです。カラフルな表紙と、温かみのあるカット・飾り枠が魅力的。
推薦者服部匠
推薦ポイント世界観・設定が好き