尼崎文学だらけ
ブース June1
午前三時の猫
タイトル 人魚姫の末裔
著者 きよにゃ
価格 600円
カテゴリ JUNE
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紹介文
A5/216P/2015.5.17発行

「人魚の種をこの目で見てみたい。これは学術的興味だ」

人魚のピートは、姉の婚約者フェルナンドに無理やり体を奪われ憤る。だが、ピートの為に命を賭けるフェルナンドを見て、心が動きはじめる。
やがて思いが通じ合い、フェルナンドの元に身を寄せるピートだが、姉との関係を思い悩み、幼い姿になってしまう。

ピートは元の姿に戻れるのか。
姉との関係に決着は付くのか。
西洋中世風ファンタジーBL。

「沢山本がある!」
 ピートはフェルナンド王子の部屋へ招かれた。
 人間の書いた本が、部屋の二面を埋めているのを見ると、落ち込んだ気分がぱっと明るくなった。
 レイシアにヒトの書いた書物が入って来たのは、ここ百年あまりだ。
 遭難した人間を人魚がアルディバルドに送り届けて以来、貿易が行われるようになった。
 人魚のものよりも簡易で分かりやすい文字は、すぐにレイシアの標準になった。
 だが人魚の本の数はさほど多くなく、ピートは知識欲を持て余していた。
 珍しい装丁の書物を見付け、読みはじめたピートにフェルナンドの声がかかる。
「好きな本を持って帰っていいよ。さっきの詫びだ」
「ありがとうございます」
「礼はいらない。私たちは兄弟になるのだからね」
 ──兄弟。
 ピートは、本とフェルナンドを見比べる。
「父が人魚に憧れていてね。ここにも何冊か人魚を研究した本がある。本物の人魚であるきみから見たら、また違った意見が聞けそうだね」
 ピートは近くにあった文献を手に取り、頁を捲った。しばらく読み進め、人魚の研究はほぼ憶測を出ていないことに気付く。
「ええ。例えば、ここに人魚の男の種について書かれていますが、事実ではありません。人魚の種はピンク色です」
 本棚に本を戻して返事をする。
 その時、フェルナンドの眉がピクリと上がった。
「へえ……。興味深いな……」
 フェルナンドが腕を組み、ピートを珍しそうにみつめる。
 次の瞬間、ピートは体に違和感を感じた。フェルナンドが近付いたので後ずさろうとしたが、体がしびれて動かなかったのだ。
「っ体がっ……フェルナンド王子……っ!?」
 フェルナンドは身動きのとれなくなったピートを眺め、ひとり言のようにつぶやいた。
「しびれ薬が効いてきたかな……」
「あ、あ……っ」
 フェルナンドが自分を陥れた。
 ピートが現実を受け入れられないでいる一瞬の隙に、フェルナンドが目の前に来た。フェルナンドの方が背が高いため、ピートの顔に影がかかり視界が暗くなる。
「人魚の種を、この目で見てみたい。はじめは真珠の涙を流してもらおうと思っていたけど、気が変わった。……これは学術的興味だ。ご協力願いたい、ピート王子」



金髪王子×黒髪人魚、BのLはそうこなくっちゃ!
えっちなBLが好きです。攻めが魅力的なBLが好きです。圧倒的にかっこよくて、しかしパーフェクトでない攻め、それに翻弄される受け。そういう関係性にドキドキします。そして受けには何か決定的な欠落や弱点があるとなお好きです。互いを補い合うような、そしてその引力ゆえにさっさとセッ…は済ませてしまうような、そういうBLにドキドキムラムラしたいです。
ですので『人魚姫の末裔』には転げまわりました。金髪の王子様×黒髪人魚の男の子!!!それはもうえっちで、素敵なBがLしっぱなしなドキドキ小説でした。

攻めの金髪王子様・フェルナンドがかっこいいです。よく考えたらとんでもない男な気はします。婚約者の弟(主人公・ピート)に手を出しちゃって、好きになったからとピートを妾にしちゃう。それでいて婚約者(主人公の双子の姉)とは表向きに結婚して世継ぎをもうけようと??つまり両方とえっちはしちゃう。おそるべきマイペース。けれどフェルナンドはかっこいいのです。いつだってピートのために一所懸命で、自分の思いを貫き通します。どうにかしてほしいものを手に入れたい、その強引さと愛情深さにドキドキしました。
受けのピートはとにかくかわいいです。えろいです。人魚なので「魚とヒトの中間みたい」な肌、涙は真珠に変わり、精液はピンク色。さ、最高かよ…。そのうえ雄っぱいまで…ショタ化まで…!個人的にはえっちの際の乳首周辺の描写がたまらんでした。男性の乳首方面に興味のある方は必見です。ジタバタしながら読みました。

えっちなシーンはいっぱいですが、読後感は爽やか。ピートの葛藤には胸が締め付けられるようでした。わーがんばれ、アカンってそれはダメ!、ウッウッよかったね…等、親戚のおばちゃん状態になりながら読みました。二人が絆を深めていくさまが丁寧に描かれていて、作者さんがキャラクターに愛情を注がれているのが伝わってきます。
また、素敵でかわいい表紙絵・挿絵だけでなく、巻末やサイトではピートとフェルディナンドの漫画も楽しめます。かわいいキャラクターたちのラブラブえっちな物語に今後もドキドキしていきたいです。
推薦者オカワダアキナ
推薦ポイント人物・キャラが好き