尼崎文学だらけ
ブース 評論A
Re.set
タイトル 中華人民共和国で満州国の面影を訪ねる
著者 りりあ
価格 600円
カテゴリ 評論
ツイートする
紹介文
中国東北部(牡丹江・東寧・横道河子・綏芬河)の知られざる満州国の遺構・関東軍の戦跡あたりを、人民のタンとツバとニーハオトイレに苦しめられながら見に行った記録。
綏芬河発中国国内バス時刻表も収録した誰得旅行ガイド&旅行記

満州国とかいいながら、満州国の解説を入れ忘れてしまったので微妙に表紙詐欺ってますが、中国で受けたカルチャーショックを追体験できる(かもしれない)旅行記をお楽しみ下さい。

 齢88になる祖父に、私が青年海外協力隊に参加をすることを告げると、顔が綻び、『いやぁ、お前もお国の為に尽くすのか、いいことだ』と、話し始めた。
 今まで聞いても語らなかった祖父の戦争の話だった。
 祖父の家には『シベリア抑留者名簿』なる分厚い本があり、海部総理から戴いた賞状が飾られていた。
 高校生の時に、何気にこの話を聞いたことがあったが、無視されたので嬉しかった。
 その後、色々あって、戦争廃墟マニアになってしまう私は、日本各地の戦跡を訪れる度、人に戦時中のことを聞くのであるが、皆、語ろうとはしなかった。
 熱心に語る人々といえば、みな赤い看板を背負い、左に翼の生えた人たちばかり。そういえば、戦争に実際に行った人の話を聞く機会なんてなかったっけ……。
 結論からいうと、祖父の話に戦争自体を否定する話はなかった。徴兵されて戦地に赴いたものの『満州にいたころは楽しかった』、『露助は酷い』、『次、(戦争を)やるときは必ず勝つ』という3点に要約される。
もう一度、楽しかった満州を訪れたい。
 そんな祖父の願いをかなえてあげたい、と、思ったものの、未知の中国。足腰の悪い祖父を連れて動けるのか? という疑問。ハードルは高そうだ……。それなら、祖父は連れていけないなら、せめて写真ぐらい撮ってきて見せたい。

 この本は、祖父の記憶のみを頼りに中国東北部の日本の遺構をご紹介すべく、人民の食いカスと痰にまみれながら、初中国を満喫してきた旅行記録&ガイドブックである。
 日本史赤点、また軍事ヲタでもないので、解説等不十分なところが多々ございますが、お許しください。同じような思いをされている方の手助けになれば幸いです。


絶対に行きたくない!(笑)
旧・満州に再度行きたいという祖父のため、写真を撮るため中国に渡った著者・りりあさん。
だが、言葉もほとんど通じない・観光地化されていない土地なせいか、その旅は過酷です。
ざっと一例を挙げると……。

・トイレにドアがない!
・銀行で両替をしようと試みるとポカンとされる。あとで偉いさんたちが出てくるが、紙幣をコピー(犯罪)したりする。
・スーパーに行くと、万引き対策でバッグを鍵付き袋に入れられる。当然会計時にもめることになる。
・掃除されていないホテル。
・突然繋がらなくなるネット。(友人が余計な言葉を書いたせいかも、と疑心暗鬼に陥るりりあさん)

とくにいろんな場所で「汚ぇ!」と明記されているとおり、中国の衛生状態はかなりのもののようです。
乗り換えのため訪れた韓国の空港で、清潔さに感動してトイレの個室を激写してしまうのもやむをえないかと思われます……。
(のちに、そんな精神状態ってどうよ、と冷静になっています)

そんな中、道を聞いただけなのに案内をしてくれる三兄弟に出会い、帰りはその母親が迎えに来てくれるというエピソードが挟まっていたのは僥倖でしょう。中国人民は優しいのだ、としんみりきます。

りりあさんの軽くてツッコミ多めの文章が、悲惨な旅を笑いに変換してくれます。
写真も数多く収録されており、田舎の中国の実情を知るには、あるいはとんでもない旅行体験をした人の実録をみるためには必見の書でしょう。


推薦者きよにゃ
推薦ポイント物語・構成が好き