翡翠の輝きが目に眩しすぎて、頭がクラクラしていた。海に反射する太陽の光よりもまぶしいそれを、直視しているとどうにかなりそうで耐えるのに必死だった。いぶかしげに顔を覗き込む彼女に気が付いた提督は、悟られないようにわざと咳払いをして意識を戻す。 「……緊急信号を受信したと聞いて……」 「ああ! あれですか!」 大きく目をぱちくりとさせて、何故か恥ずかしそうにモジモジとし始めた。 「どこかケガを? 船渠は空いているので……」 「……ごめんなさい」 もう一度、彼女はもう一度、頭を下げた。 「日本から持って出た『間宮羊羹』がなくなってしまったので」 隣で聞いていた大淀の肩の力が抜けていくのを感じた。間宮はクスクスと笑っている。 「えっ!? 緊急事態って……」 「……はい。この海域を通って、間宮さんがいると思ったら、我慢できなくなってしまいました」 「はあ……」 目の前には物語から飛び出してきたかのような美しいブロンドの髪の彼女はとてもマイペースだった。すでに軍令部にも『緊急信号受信により、伊8の救護を行った』と、連絡を打った後だった。今頃、軍令部でもてんやわんやの大騒ぎだろう。 「お、おう……。間宮」 「はい、なんでしょう」 「ようかんって今日はあるのか?」 「もちろんですよ」 大淀は口をあんぐりと開けたまま、動かなかった。それはそうだ。率先して指揮をし、救出に向けて一番動いていたのは彼女である。それが、こんな理由で……。救援活動をしてもらった千歳たちには絶対に黙っておこう。 「じゃあ、はっちゃん。ようかんとお茶を用意しておきますから、先にお風呂入っちゃってください!」 「わーい! お風呂! 久しぶり!」 ではまた後ほど。彼女は一礼し、明石に案内され船渠に歩いていく。後ろ姿でさえも追ってしまう。異様な視線に気が付いたのか、一度、こちらを振り返り、微笑んで会釈した。後ろ姿も可愛い。足の付け根とニーソックスの間の肌がぷにぷにが触りたくなってしまう。 「へぇ……」 提督の好みって、ああいう方なんですね。間宮は思わず煽りを入れたくなってしまったが、ぐっと堪えて苦笑いの種した。代わりに独り言を口にする。 「伊号第八潜水艦……あの娘ですか……司令官の……」
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