尼崎文学だらけ
ブース 詩歌B
ゲラサ
タイトル 地獄百題
著者 ネムカケス
価格 300円
カテゴリ 詩歌
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紹介文
BL俳句百句。

『一』
少年たちの季節、あの世とこの世が交差する破瓜のとき。
ぼくときみ、だれかと死神、現が薄く剥がれた向こう側に滲んでゆく影のこと。

『二』
じっとりと果実が黒く熟れていく速度を微睡みの中で追うやうな。
禁忌と蹂躙、まわるきせつは何れ、また地獄の季節を連れてくる――兄に会うために。

    一
薄氷を割るぼくら恋地獄いき
春浅き洋菓子店で逢ふ死神
偏西風つばめたちのきれいな悪意
出勤をするとき踏み絵ごこちかな
野蛮とは思はずきみに春を売る
藤房のゆれてひとつがおまへの掌
くびすぢにふれたところから蝶になる
夢に夢呑ませはまぐり汁すする
子午線を抜けて五月の野に至る
死神の少年めくや初競馬
天瓜粉うちあふても隣人ならず
奇形疾く熟れて桜桃ジャムみだら
のびきらぬ脛に花茣蓙花の跡
他界よりグラスかたむき夏季休暇

   二
次子転生末子戴天冬銀河
わかものはとはおもふものみづ汲みぬ
蓬莱の翡翠の橋に余光かな
春襲ひがはりに兄連れ去りぬ
小夜時雨銀のスプーンが曇りゆく
雑煮して兄かへるいつかかならずかへりくるを待たう
墜ちるために糸に繰られる傀儡かな
祝祭に花冷えの檻ひらかれる
芳恩を奪ひつくして春の水
廃帝がらんるのどかにあふむけり
春の夢みんなあなたにさしあげる
五位の鷺病むほどに透きとほりゆく