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白鳥七生が勤めている大学は、学部ごとに教務課があり、そのとりまとめである学生部所属の彼が教授に連絡を取る場合などはその学部の事務員に取り次いでもらうことが多い。ただ、史学科の福田准教授に用事があるとき、七生は直接准教授の研究室に伺うことにしている。というのも、福田准教授は顔が妖獣マメシバに似ていて愛らしく、教授陣の中では若く紳士的で話すのが楽しいからだ。研究室で何度か話すうちに、准教授のほうも七生のことを覚えて気に留めてくれたのか、インスタントコーヒーをごちそうになるくらいにはなった。 |
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キヨムさんのBLはほかに『あくだま』を拝読しているのですが、ほんとうにふしぎなんですよね。 京都の町で夜な夜なプロレスをやっている妖怪たちのBLだ、と聞かされたらちょっとびっくりすると思うんですけど、「受けがオークションにかけられて攻めが落札する」とかいう王道も王道の展開があったかと思えば、そのシチュエーションから思いもしない方向に話が転んだりして。そんな物語を紡ぐ文章は、味があったり色気があったり美しかったりでそれ自体に魅力がある。こんな話を書ける人はキヨムさん以外にいないなあ、とごく自然に思います。 この『よくないおしらせ』もそんなお話です。「媚薬と間違えて妙な薬を飲んでショタ化」というBLらしい展開があったかと思えば、ほのぼの。三角関係のお話のはずが妙にほのぼの。攻めはかわいいカモを飼っていたり魔法の鏡を持っていたりおとぎ話のようなのに、ちょっかいかけてくるお兄さんは誰も叶う気がしないいい男だったり恋人たちの睦みあいにはドキドキさせられたり、色気むんむんなお話でもあるし。もう翻弄されっぱなしです。 とにかく請けあいたいのは、このお話でしか味わえない面白さがあるということです。読んでみてほしいなあ。 | ||||||||||
推薦者 | まゆみ亜紀 | |||||||||
推薦ポイント | とにかく好き |
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晴れて付き合うことになった七生と雅人。だが、ダブリンで短期留学中に雅人が買った媚薬のせいで、七生が子供の姿に戻ってしまい──!? 「体は子ども、頭脳はおとな、か」 「事件が起きないといいんですが……」 「すでに起こっているから問題ない」 「出会い編」は現在売り切れとのことですが、登場人物紹介や後書きなどで補完できますし「七生と雅人は付き合う寸前だった」と覚えておけばOKです。 主人公の七生は大学職員で鴨や猫とナチュラルに話せる特技がある26歳。誰に対しても敬語で(動物にも!)、七生がいるとその場が和んでしまうという癒し的な存在。 頬を摘ままれて「ふええ」と、およそ26歳とは思えない泣き声を出すけれど、そんなところも含めてかわいらしい。 一方、七生の恋人・ツンデレ気質の雅人は、モデルをしている外見と裏腹につっぱっている感じ。(でも七生のことがかわいいと思って、要所要所で七生に迫ります)。 ふたりの「出会い編」に続くこのお話は、雅人の兄・朝雛誠人(まこと)が七生に言い寄る男として出現。さらに媚薬を飲んでしまった時に泣きつく魔法使い「ことわりさん」や、彼の使い魔の黒猫・ねこきちさんなど、新キャラが数多く登場します。 このキャラたちの個性的なことといったらありません。 仕事の付き合いでは礼儀正しく紳士的な態度だったのに、七生に貸しを作るや否や「じゃあ、一回ヤらせて?」と柄悪く豹変する誠人。 普段は七生を「あんた」呼びしているけれど、誠人にちょっかいを出されたと知って「誰にも見せないように」車を走らせる雅人。(このシーンは、男の嫉妬を表現してていいなぁ! ときゅんきゅんきました) ちいさくなった七生に「ずいぶん可愛くなったね、きみ」とことわりさんが言う時にも雅人は嫉妬していて、七生は皆に好かれて可愛がられています。 ほかにも、肩から落ちるシャツ姿の七生がかわいい! 二人の男から同時に求愛される受けが美味しすぎる! ねこきちさんの毛に、七生と同じように埋まりたい! ……などなど、笑いと萌えが満載のキヨムさんワールドへぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。 楽しい時間をお約束しますよ! | ||||||||||
推薦者 | きよにゃ | |||||||||
推薦ポイント | 人物・キャラが好き |
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この本は、昨年の文学フリマ東京の会場で手に入れて真っ先に読んだ。 夢中になって読んで、スペースに来てくれたお客さんへの返答もおろそかになって、「すみません」と声をかけられるまで没頭してしまっていた。 朝雛きょうだいと白鳥さん(なぜか白鳥さんは白鳥さんと呼びたい)の、ちょっとむずかゆい三角関係。きっとキヨムさんだから、落ち着くべきところに落ち着かせてくれるはず…そういう信用はあるのに、「白鳥さん…!だめだよ、白鳥さん!」って服の袖をひっぱりたくなるような危なっかしさ。 その危なっかしさは、口下手というか無口というか、あまりおしゃべりの得意でなさそうな朝雛雅人くんにこんなことを言わせてしまうほど。 「あんたが、まだ、自分が全部自分のものだと思ってるなら、認識を改めたほうがいい。あんたには、今、自分の意思で勝手にできないことがある。あんたなりに俺を大切にして、俺に心配をかけるようなことをしてはだめだ」 夜の研究室・媚薬・ショタ、そして現実にすこしだけ混じりこむ、怪異のような「ひとにちかいけれどよくよく考えたら人じゃないよな?」っていう登場人物。 夢中になって時間を忘れて、本を閉じてから「もっと読みたい! こんなところで終わらせるなんてご無体だわ…!」と身もだえしてしまう、そしてその悶絶を誰かと共有したくなる本なのです。 絶対おすすめ!! | ||||||||||
推薦者 | 孤伏澤つたゐ | |||||||||
推薦ポイント | 世界観・設定が好き |