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タイトル 八奈結び商店街を歩いてみれば -夏やで!-
著者 世津路 章
価格 800円
カテゴリ ライトノベル
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紹介文
大阪のどっかにある《八奈結び商店街》は今日も今日とて騒がしい。
熱い日差しをものともせずに
5人の少年少女は今日も、泣いて、怒って、笑って生きる。

両親がいない繁雄・和希、千十世・美也の兄妹、
そして彼らの幼馴染であるなずなをメインに、
八奈結び商店街で起こる様々な騒動を描きます。

また、本作がオマージュしている《吉本新喜劇》を
(独断と偏見に基づき)解説した、チュートリアル小話も書き下ろしました。
大阪になじみのない方でもバッチこいです!

なにわの人情とお約束をたっぷり詰め込んだ総集編、暑気払いにぜひ!

?夏の日差しが、八奈結び商店街のアスファルトを焦げ付かす。
 アーケードもない商店街の通りをじりじりと熱して、向こうを見渡そうとすれば像が姿をゆらりとくゆらす。午後三時を過ぎた頃、涼しい夕風を期待するにもまだ少し遠い時間帯。
 それでも微かな風が、どこかの店先の風鈴を鳴らした。呼応するように、あちこちで軽やかな音色が立ち上る。遠くに聞こえる蝉の合唱と相まって、ちょっとした演奏のようになる。
 駄菓子屋の主人の小東さんが、うちわを仰ぐ手をゆっくり止めた。ふと見やれば軒先に吊るした小さい『氷』の掛け軸が、ほんの少し揺れて、じきにまた動かなくなる。小東さんは首にかけた白い手ぬぐいで、こめかみから垂れてくる汗をぬぐってから、よっこらしょ、と掛け声をつけて立ち上がった。
 もうしばらくすれば、授業を終えた小学生たちが商店街を賑わせに来る。彼らは家にランドセルを置くと、また外へと遊びに繰り出す。その中には、小東さんのかき氷を食べに来る子らもいる。小東さんの皺だらけの手で丁寧に削られた氷は、いちごかレモンかメロンのシロップが掛けられる。どれも子どもたちには大人気である。
 小東さんが一日で一番忙しい時間帯へ向けて準備をしようと店先に出ると、果たして一番の常連が、向こうから走ってくるのがぼんやり見えた。頭の上に左右に結わえた髪をなびかせて、いつものように元気いっぱいに駆け回る姿を、小東さんはよく知っている。小東さんだけじゃなく、八奈結び商店街の、誰もが彼女を知っている。
「おぉい、かっちゃん。今日は氷なんにする」
 その少女が聞こえるようなところまで来て、小東さんは声を張り上げた。でも少女は足を止めず、小東さんの前を走り抜けた。そのまま顔だけ振り向かせて、笑って見せた。
「今日な、いそがしいから要らへん!」
 そして、ランドセルの冠をバタバタ言わせたまま、少女は通りを左に曲がっていった。
 笑いながら、小東さんは溜め息を吐いた。あの娘が忙しいなんて言う時には、決まってひと騒動起こるのだった。
 大ごとにならなければいいが……ひっそりそう祈る小東さんの耳に、どこかで水打ちする音が聞こえてくる。

 まだ始まったばかりの夏が、八奈結び中を照らしている。


Girlfriends Forever
 内容盛りだくさんの本なので、一番好きなエピソードについて書きますね。
 なずなの友達のユキが、自分をこっぴどく振った男の子、植川に復讐する話。

 ユキは商店街の凄腕美容師アキさんに化粧をしてもらい、隣町の美少女「立花優理」に変装する。
 その姿で植川とデートし、キスしようと目を瞑ったマヌケ面を写真に撮ってSNSで拡散してやろうというのだ(怖いですね!)

 結末がどうなったかは本編を読んでもらうとして、私が泣いたのは、ユキの苦しみを知ったなずなのセリフ。

「ユキもユキやわ! なんでこんなん、話してくれんのよ!
 こんな、こんなかなしいこと…」

 学生時代、男の子は憧れで恋は貴重品で、女の子の優しさは身の回りにあふれて当たり前過ぎてその大切さに全然気付かなかった。
 友達が自分のために心を砕いてくれること。その真剣な眼差し。美しさ。
 ユキもきっと何十年後かに、植川ではなくなずなのことを思い出して切なくなるのだと思う。

 美容師のアキさんはそういうことを全部分かった上で、ユキを変装させたり、なずなの頬に猫のヒゲを描いたりするのだろう。
 八奈結び商店街に行ったらまず最初にアキさんの美容室に入りたい。

「本場ブロードウェイ仕込みのメイクやで?」

 その真偽は誰も知らない……
推薦者柳屋文芸堂
推薦ポイント世界観・設定が好き

この本は、同じ商店街に住む小学生〜10代の若者5人をそれぞれ主人公
にした5つの短編と、番外編+黒猫ちゃんのSS+吉本新喜劇についての
コラムという豪華編成でできています。どの作品もコミカルで読みやすく、
とっても面白かったです!
主人公5人それぞれの個性が際立っていて、どの子もすごく魅力的でした。
彼らが商店街のコミュニティの中でそれぞれに役割を持っていて、一人ひとりの
存在がみんなを幸せにしている図式がきちんと描かれているので、読んでいて
幸せな気分になります。
これは、共同体の理想的なカタチだなーと…。
今はなかなか、こういう人間関係を結ぶことが難しい世の中になってしまった
なぁ…と、懐かしさと、憧れにも似た気持ちになりました。
コラムに書かれていた「吉本新喜劇」のような人情の世界や、人との強い繋がりの
中に、うまく行かない浮世の怖さや辛さもしっかりと描かれていて、楽しいだけでは
ない日々の厳しさも盛り込まれています。けれど、最後は明るく楽しく締めてもらえる
ので、読後感がすごくいいです。
世津路さんの描く物語には、そういう明るい希望というか、愛が溢れていて、そういう
ところにすごく元気をもらえます。
それは、単にありもしない夢を描くんじゃなくて、色んな暗い面も踏まえつつ書いて
くださっているからこそ、心に響くというか。


吉本新喜劇に関するコラムも、すごく面白くて納得でした!
そうそう、気だるい土曜の昼下がりに何となくテレビをつけたらやっているん
だよね…そして、やってたら何となくそのまま見ちゃうんだよね…
そして長年見続けた結果、いつの間にか、出てる芸人さんが他人とは思えなく なってるんだよね…(笑)

関西の言葉も大好きなので、そういう点でもいっぱい堪能させてもらいました!
次はどんなお話が出てくるのかな。商店街のみんなの今後の成長を、これからも
ずっと見守りたくなるような作品でした。
推薦者まりも
推薦ポイント人物・キャラが好き

明るく楽しい正統派人情コメディー
いつもそうなんだけど、世津路さんの本を読むと、ボリュームたっぷり楽しい本編もそうなんだけど、随所随所に差し込まれた小話のページがとても面白い。
まるで「アメちゃんあげる」というナニワのおばちゃんのような、気安い感じの親切心。
それがこれでもか、と詰まってるのが、この本だと思う。

子供が活躍する話が大好きな自分。商店街で小学生から高校生までわちゃわちゃやってる。しかも男女様々、おしゃれに、万引き問題に、子供の大きな成長。彼らを温かく見守る大人たち。古き良き児童文学の香りがたまりません。
それでいて、ただのノスタルジーだけの物語ではなく、現代らしい悩みがアクセントとして生きている。
しっかりとした構成力と、それでいてコメディーとしての楽しさを忘れない世津路さんのサービス精神が発揮された傑作だと思います。

ちょうどあまぶん開催は夏真っ盛り。
夏の読書体験としていかがですか。
推薦者服部匠
推薦ポイント人物・キャラが好き

これが浪花の人情や!
 ここはあえて関西弁でいかせて貰いますわ。え? 大阪弁ちゃう? 細かい事気にせえへんの!
 こちらで描かれているのは浪花の商店街の人情物語。ハートフルストーリーです。
 まあ、ほのぼの楽しいだけのお話と思いますわな。

 ちゃう! 甘い! グリコより数倍甘い!

 じんわりとした登場人物の成長に対する苦みがこれはもーきっちり入ってますんや。
 流石ですわなあ。

 しかもやで、ヤンデレ要素だだアリ!
 しかも兄妹ヤンデレ!
 これは美味しいでー。
 ヤンデレ兄妹と、健全兄妹、両方楽しめるこのお得さ!
 コスパ良すぎるやろ!
 しかも女子高生の不器用恋心もありや!
 相手の男の子は超鈍感や!

 どんだけコスパええねんマツモトキヨシか! いう話ですわ。

 さらにさらに、吉本新喜劇の解説がついてます。
 これがまた「あー、超わかるー」って解説なんや。
 ほんまハンパないわ世津路さん。
 それから関西人にとってめっちゃ重要な要素言うとくわな。

 この作品、大阪弁が完璧。

 これはおっきいやろ。めっちゃおっきいやろ。テレビの「こいつ大阪なんか京都なんかどこ住んでんね や! って兵庫なんかい! 全然ちゃうやろ!」って関西弁と違います。
 リアル大阪弁。それがめっちゃ軽快にテンポよく喋ってます。
 えー、後、なんやろなあ。言いにくい事言っちゃってええかなあ。

 ロリコンの方は読んで損無し。

 これは絶対。
 超絶対。
 小学生女子めっちゃ可愛い。

 あー、まずい事言うてもうたかな。
 自分に正直に生きすぎたかな。

 とにかく、老若男女楽しめるコスパの良さです! よろしゅうおたのもうします(あのCMの口調で)

推薦者浮草堂 美奈
推薦ポイント表現・描写が好き