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折しも宇宙開発が乗りに乗ってる時期だった。地球だけじゃなく、月や火星、フォボスにダイモスにケレス、木星軌道にまで宇宙港や居住区、農業・工業プラントが次々と建造されていて、太陽系内の航宙図なんてのも作られていた宇宙バブルの時代。エネルギー資源やレアメタルを求めて、宇宙まで荒らし始めた黎明期。 |
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ライトSFお仕事物。宇宙の常識で育った人間が地球を外から眺めるお話。 軽いタッチで描かれる近未来。重力は見えなくても、作用する。 なんだけど。 なにこれラヴィ。雑破で奥手な女の子が幼なじみにゆっくり押し倒されてく話でした。 | ||||||||||
推薦者 | まるた曜子 | |||||||||
推薦ポイント | 世界観・設定が好き |
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当たり前に宇宙で暮らし、泣いて笑って恋をする、『月の日常』がここにあります。 この物語は、宇宙SFであり、ひとりの女の子の物語です。 全地球が海に沈み、人々が月や火星などの宇宙空間に生活の本拠を移した時代。 月面都市ネクタリス・シティを舞台に、そこで暮らす女の子、蛍の日常と葛藤を描いています。 カノープス・スペーステクニカ社の船内・船外作業員として働く蛍の悩みは、幼なじみであり、仕事の相棒でもある男の子ユーリのことだったり、あるいは自分の過去から続く個人的なものだったり。 語られるのは、だれもが心の隅のどこかに抱いたかもしれない葛藤であり、描かれるのは、仲間とそれなりに楽しく毎日を過ごし、あるときにまた不意に壁にぶつかる。そんな普通の女の子の日々です。 けれども、この作品を印象的なものとしているのは、それらの日常が宇宙、月面という過酷な環境でテクノロジーとともに生きる風景の中に描かれているからにほかなりません。 当たり前に宇宙で生まれ育った蛍の目を通して見える世界は、夢のテクノロジーの数々が実用化された風景であり、死と隣り合わせの過酷な環境でもあり。けれどもそれら全てをひっくるめて『日常』である、としてあるがままの人間が普通に暮らす場所として描かれています。 一歩外に出れば死の宇宙であるネクタリス・シティ。けれども蛍たちにとっては、素敵なショッピングモールがあり、地球が見える小洒落た美味しいレストランがあり、会社があって、仲間とともに暮らす街なのです。 そんな、折にふれて本編の端々で描かれる『宇宙にいながら地に足の着いた』未来感と生活感の同居する情景には、ただただ惹き込まれるばかり。この点だけでも宇宙好きの方は手に取る価値があると思います。 楽しいばかりではない。悪いことばかりでもない。なにもかもごちゃまぜになって、けれどそれゆえにすてきな世界。 自分たちのいる地球と何もかもが違う月の上での物語だけれども、そこに人間が生きるのならば根っこは決して大きくは変わらないんだろうな、と。 そんなことに思いを馳せながら、ありえるかもしれない宇宙での暮らしを追体験できる。自分にとってこの本はそんな一冊です。 余談ですが、作者である凪野さんの短編集『ヴェイパートレイル』収録の『ピートの葬送』は、本作と世界観を同じくしています。是非あわせて読んでみてください。 | ||||||||||
推薦者 | 夕凪悠弥 | |||||||||
推薦ポイント | 世界観・設定が好き |