【まえがきという名のヨタ話】 イエメンのサナア旧市街地のホテルに泊まったときのこと。 午前4時過ぎ頃、一斉に響き渡ったアザーンに叩き起こされた。まだ暗い街に響く、イスラム教の朝の訪れを告げる音。遠い異国の地に来たものだ……。慕情に震えていた。 が、これが3日も4日も続いたらどうだろう。夜も開けきらぬうちに開催される『ムサッ! オヤジだらけの無秩序爆音カラオケ大会』によって叩き起こされる毎日。蓄積する疲労・寝不足・イライラ……。お前らもうちょっと静かにしろや! と思ったことは2度3度ではない。 アザーンさえなければ中東諸国の旅行は楽しいのに……と、ボヤいていたところに出会ったのは、日本初で唯一? のアザーン研究家のM氏。 後に『師匠』と崇め奉ることになる彼は、中東諸国のアザーンを録音しまくり、会う人々にその奥深さを布教して回る謎の人物だった。 モスクによってアザーンが違うこと、録音ではなく生歌であることなど、知識が深まると共に、何時の間にか『ヒゲの濃いオヤジのダミ声』と思っていたあの雑音が、高尚なる音楽にメタモルフォーゼを遂げた。 今までの自分の意識を悔い改め、気がつけば彼が率いる謎のアザーン愛好組織『アザーン友の会』に入会してしまっていた。
日本に帰国し、周りの人々に『アザーンの素晴らしさ』を説き続けているのだが、社会的ニートでヒキコモリの人望のなさ故か、未だ、誰も聞く耳すら持ってくれない……。ああ……orz
というわけで、『アザーン』が何のことかも解からない無垢な子猫ちゃんに向けて、ちょっとだけその奥深さを味わってもらおうと思って勢いだけで出来てしまったのがこの本である。 アザーン好きの同志を増やすのが目的であって、イスラム教の布教活動のためはないことを先に明言しておきます。念のため……。
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