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小さな頃から、たまに我が家にやってくる、『おじ』を名乗る男が好きだった。ヒゲだらけだったり埃臭かったり髪が茫々だったりしたが、現れる度美しい小物や珍奇な物、奇妙な刺繍の羽織物などを橙(ともる)にくれるし、気味の悪い昆虫や爬虫類を、美しい写真に納めてきて見せてくれた。グロテスクなのに、写真ですら触れたくないのに、妙に目を離せない鮮烈で蠱惑的な小生物たち。 |
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トラウマ持ちで心を閉ざそうと生きてきたヒロイン橙と、一見チャラン ポランで自由人なおじさん要。 大っぴらには言えないふたりが年の差・近親の障害をのりこえて しなやかに軽やかに、二人で飛び立つための生き方をもさくする物語。 逞しく力強い絆とちょっとドキドキするえっちな展開に……と、 ドラマがずっしりしっかりとあって楽しめました。 | ||||||||||
推薦者 | 第一回試し読み会感想 | |||||||||
推薦ポイント | 物語・構成が好き |
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まるたさんの作品は、どれも女の子がしなやかでかっこよく、おまけに可愛いのが特徴のひとつですが、この「羽化待ちの君」と続編である「Beautiful Days〜碧の日々〜」のヒロインをつとめる橙ちゃんはナンバーワンと言っても過言ではないハイスペックヒロインです。一家に一人とは言いませんが、ぜひお友達になりたい。 橙ちゃんの手料理で、「僕の真摯な魔女」のすずのんや「花と祝祭」の絢音ちゃん、「淅瀝の森で君を愛す」のまお姉さんと女子会をしたい。そういう女の子です。(ステマ) 既存の恋愛ものジャンルにありがちな、いわゆる「お邪魔系・トラブル体質系・夢見るヒロイン」とは一線を画したヒロイン像は、あまり恋愛ものを読まないという方にこそ読んでいただきたいです。もういっそ、ヒロインと呼ぶのもやめたい。ヒーローです。私の。 本作は叔父さんと姪の、いわゆる歳の差(18歳!)近親もの。橙が学生の頃から写真家として各国を飛び回っていた要は、橙にとってもっとも身近な「世界を見せてくれるふつうの大人」。身内からはダメのレッテルを貼られつつも、幼い頃に遭遇した事件のせいで、橙が抱く脆く性急な早熟願望をうまく受け止めつつ、日本での事務作業を任せるなど、自分の利益と橙の願望をすりあわせて最善の形に導いていく、みたいな包容力のある人物です。 ふたりとも、行動力の塊みたいな性格で、実務的、実際的。と書くとシステマチックで冷徹な人のようですが、ちゃんとけじめをつけられる人、という意味です。世間的にはおおっぴらにできない関係にあるふたりが、ふたりであるために必要なことをひとつひとつ着実にやり遂げていく。選び取り、あるいは捨ててゆく、その地に足が着いた描写とディテールの圧倒的リアリティで物語をぐいぐい引っ張っていきます。 綺麗事だけではありません。苦みも失敗も味わって、それをも糧に成長していく。だからこそ描かれる希望が尊いのです。 いわゆる昼ドラ的な、どろどろした感情の交差ではなく、愛情は(ひとまず)前提、そこからの紆余曲折を楽しみ、寄り添う物語。 えっちいシーンはえっちいですけど(R18だけに)、可愛いし祝福気分でいっぱいの、いわばボーナスステージです。お楽しみに。 こちらを好きな方は続編「Beautiful Days〜碧の日々〜」も間違いなくはまりますのでぜひぜひ。 | ||||||||||
推薦者 | 凪野基 | |||||||||
推薦ポイント | 人物・キャラが好き |
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主人公の少女・橙(ともる)が、少女から女性へと成長していく姿を描いたシリーズの第一弾。 序盤からハードな問題が待ち構え、メリハリの効いた展開ですが、 シリーズを通じて細かな部分をよく調べて書かれており、情景描写の細かさ×人物の心の揺れが しっかりと描かれている点が特筆すべき作品です。 敢えて言うなら恋が濃い、味わいのある作品として推薦いたします。 | ||||||||||
推薦者 | 悠川白水 | |||||||||
推薦ポイント | 表現・描写が好き |