出店者名 星座盤
タイトル 星座盤vol.9
著者 浅岡千晶、金沢美香、清水園、濱本愛美、丸黄うりぽ、三上弥栄、水無月うらら
価格 500円
ジャンル 純文学
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紹介文
詩3編、小説6編を収録。
誰かの秘密、心の奥底を少し覗けたとき、垣間見てしまったとき、ひとはどんな思いを抱くのか。
気持ちがしんとしたり吐きまくったり猫とうっかり心中しかけたり。
秘めたる熱が、怨みが、あなたにじわじわと伝わってきたならば幸いです。

詩 「花送り」「女と靴下」「はなつまみ」(金沢美香)

小説 「心音」浅岡千晶
   「嘔吐」清水園
   「ポテトサラダ」三上弥栄
   「鷲ヶ鼻の夕焼け」丸黄うりぽ
   「金魚島」濱本愛美
   「きぬぎぬの」水無月うらら

二人だけの食卓は、お互いの咀嚼の音が聞こえるほど静かだった。ぱりぽりと漬物を噛む音が妙に響いていた。不意にアカリの声が聞こえてきた。顔を上げ正面のアカリを見た。
「……家を出るわ」
 無表情にアカリが口を動かすのが見えた。それは、おはよう、おやすみなさい、といった習慣的な挨拶のように極めて自然にアカリの口から流れ出た。(清水園「嘔吐」より)

家の光――付録と書かれた家計簿のような雑記帳を開いた。繰っていくと覚書のように順不同で様々なことが書きなぐられている。――さんに線香代千円。検査入院と書かれた日付の下には、タオル、下着、ビニール袋、薬と書きつけられている。血圧高い。桜満開。隣うるさい。一言日記みたいな日もある。ぱらぱらと繰っていって手が止まった。
――長生きしてすまない。
 施設に入れられたと悪態をついていた婆ちゃんの拗ねた顔が浮かんだ。(濱本愛美「金魚島」より)