出店者名 猫春雨
タイトル たまにはいつものずるやすみ
著者 紅野はんこ
価格 100円
ジャンル 純文学
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紹介文
普段、長編を書かれている紅野はんこさんの短編小説です。
コピー本であっても、本という形式は初めてという、貴重な作品。

学校を行かない理由は女の子らしいカワイイ理由。
父親との関係も含めて、ぜひ心の機微に触れてください。

■たまにはいつものずるやすみ

 たいそう不愉快といった雰囲気で、鏡の中の自分に睨まれた。寝起きの気分は最悪だ。悪い夢でも見たのか、べたつく汗が体を覆っていた。実像のない不快感が払いようもなく全身を包んでいる。
 冷水を顔に被ってから鏡を見つめ直した。昔から人よりやや毛深いので、油断すると顔にも産毛が生えてきてしまう。元気があれば顔剃りをしたいところだが、どうにも気分が冴えない。今度は私が鏡の中の自分を睨んで、洗面所を出た。
「父さん、今日は学校休むよ」