出店者名 白昼社委託
タイトル 最果て食堂2
著者 七歩
価格 400円
ジャンル ファンタジー
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紹介文
「こんなに愛しい食事は多分最初で最後」
食べてもらえない生贄娘×食べないあの方の幻想的日常、2冊目。
クモを嫌う女狐の攻撃や、人を食べたことのあるカルーラの昔話。最果てで様々な出来事と出会いクモやクモを取り巻く状況は少しずつ変わっていきます。
愛のない世界の愛についてのお話。

「こんにちは」
 窓辺に訪れるようになった何夜目かに、
「あのね、なかなか言いだせなかったんだけど本当はこんばんはの方がいいと思うの」
 ロウはまばたきしながらそう言った。言い出しにくそうにおずおずと控えめに。小さな淑女の気遣いが嬉しくて何度も挨拶をやり直した。
「こんばんは」
「こんばんは」
 二人向き合い目が合うとクスクス笑い合う。この時は気づかなかったが、私はこの日、ロウと完全な友達になったのだと思う。
 毎日この屋敷を訪れ夜を共にするうち私はどこへも帰らなくなった。すっかり人の言葉も覚え、人の生活も覚え、私にとって最も安らかで愛しい日々が過ぎていく。
 そんなある日のこと。蜜のようなこの暮らしを揺さぶったのは一通の手紙。差出人はもう何年も帰ってくることのなかった彼女の両親だった。
「結婚しなさいって」
 少女から娘へ。出会ったあの日から数年、彼女は美しく育っていた。封筒の中には一枚の写真。それから素っ気ない手紙。政略結婚というものだと彼女は説明してくれたが、結婚というものを私は知らない。
「結婚というのは愛し合う者同士、永遠に一緒にいる約束をすることよ」
「愛し合うもなにもロウ。知らない相手じゃないか」
 知らない相手を愛するという矛盾に捕らわれた私にロウは説明を続けた。結婚の上に政略とつくと話が違うのだと。急なことで詳しいことなどまるで解らなかったが政略結婚が及ぼす私たちの未来に震える。
「結婚してしまえばカルーラ、あなたとはもう会えない」
 理由など知らないが嘘などつくはずもない。ロウと別々に暮らす。おはようもおやすみも言えない。それからこんばんはも。私ははじめて挨拶を教えてくれたあの日のことを思い出していた。

  


鳥分増しまし
食べてくれない人喰いもの。
こういうどっちにもあれなお願い事系好きだ……。

そして、飯テロ、そして鳥!

2巻になって、あの方がなんかめっちゃ可愛いくなっています。
かき氷のくだりとかどうしたの。カワイイけど大丈夫?? と聞きたくなる。
カルーラの話が好きです
敵意を対等な扱いというのがすっごい好き!


そして、鳥が増えてます!増えてますよ!!
推薦者小高まあな

手を合わせて唱える「いただきます」は祈りにも似て
待望の第二作。
クモと……というか、人間と食堂を訪れる人外の存在たちはきっとそれほど違わないんだろうなあと感じました。
食べる、殖える、生きる。
近いからこそ反発し、憎み、愛する。
欲望の対象になる。

名というのもそれで、定義してしまうと何かしらの情動のもとになってしまう。
けれど、それが「関わる」ということで、「認める」ということ。
柔らかな筆致で軽やかに描かれる濃密な生のいとなみ。じんわり効きます。
でっぷりした卵焼きが食べたいなあ。
推薦者凪野基