出店者名 真北理奈
タイトル 水月飛翔
著者 真北理奈
価格 200円
ジャンル 恋愛
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紹介文
水をテーマにした短編小説

キーワード/夏、恋、危険、心中、夢

高校の一学期の修了式を終え、夏休みへの希望を語る澄子(すみこ)と親友、渚(なぎさ)。恋に浮かれる渚と分かれ、帰路につく澄子は少年、彰(あきら)と出会う。
渚の恋する相手であることを知った澄子だが、彰は迷いもなく澄子に近づく。

A6コピー 和紙(雪orピンクレース)マスキング装飾
マスキングや和紙は数種類あります。中身は一緒です。

 ゆるりと、何かが食い込むような感じがして、薄れゆく意識の中で、ああ、もうだめなんだなと思った。
 小さな魚だった。名前は知らないけど。
 小さな魚ゆえに、食べられるのは必然。そうでなくてはほかの生物は生きていけないんだ。
 それが、生きるということは、生まれた時から知っていた。本能的に組み込まれていたのかもしれない。

冒頭文P.3

 自身の怪しい思惑は表に出さないよう勤め、仮面として貼り付けた。いわゆる『優しさ』と呼べる微笑を彼女に向けてみた。
 すると、どうだろう。
「ありがとう」なんて言って笑ってくれたではないか。
 彼女にとっては見ず知らずの自分に向かって。
 どれほど嬉しいことか、きっと彼女は知らないのだろう。
 ──知らないままでいて。
 それは、祈りにも近い、最後の砦のようなものだった。